古狗
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リの先端が、カマキリの腕のように大きく、真っ直ぐに開かれた。槍だ、それは粗雑な刃のノコギリは、一瞬にして射的距離の長い槍へと変身した。そして射程距離の伸びたその刃先は、砂蜘蛛の首を斬り裂いた。
「カハッ!?」
完全致命の傷を負った砂蜘蛛は攻撃を強制的に中断せざるをえない。首から流れる血液を止めるため、慌てて砂を集めようとしたが、それも遅かった。
狩人が一歩踏み入る。それはノコギリの射程距離内だ。
「フッ」
狩人は槍を振りながら変形させてノコギリに戻し、砂蜘蛛の右手の肉を削ぐ。
続けざまにノコギリを振るう。砂蜘蛛の左手の肉を削いだ。
続けざまにノコギリを振るう。砂蜘蛛の露出した両手の骨を粉砕した。
続けざまにノコギリを振るう。砂蜘蛛の顔の肉を削いだ。
続けざまにノコギリを振るう。砂蜘蛛の頭蓋骨を粉砕した。
続けざまにノコギリを振るう。砂蜘蛛の胴体の肉を削いだ。
続けざまにノコギリを槍に変形させながら振るう。砂蜘蛛の上半身と下半身を二つに分断した。
そして砂蜘蛛は絶命した。
「……」
狩人は小さく肩を上下させ、地面に崩れ落ちた砂蜘蛛の亡骸を見下ろす。それは無残なもので、もはや砂蜘蛛の体毛は砂色が見えないほどに赤く染まっていた。狩人の全身も、血に濡れていない場所を探すほうが難しいほどに赤く染まっていた。
「……」
狩人は砂蜘蛛の死体に背を向け、その場を去る。ここにもう獲物はいない。次の獣を探して歩み続ける。
そして小さく、つぶやいたのだ。
―――次は、もっと強いヤツがいい
◆
檻之宮、犬上本家。古くからこの地の獣を荒ぶる神として狩り、鎮める役目をおった一族の屋敷。いわば、この地の狩人が集う工房のような場所だ。
この屋敷の大広間に人が集められていた。緊急の会議だ。
「それでは、本日の議題に移る」
会議を取り仕切るのは白髪妙齢の美女、犬上本家当主『犬上伊花』。その後ろには娘の『犬上サクヤ』、そして犬上家の従者一族長の『犬護重衛』が控えている。
「我々犬上家、及びその分家の犬尾、犬中が狗神憑を清める役割をおっていることは言うまでもない。この役目は我々が先祖から代々受け継いできたもの故、他に替えの利かないものであることだ」
伊花はそこまで言うと合図を出した。すると重衛の娘である一衛と二衛が出席している面々に資料を渡していく。その資料にはいくつかの写真が添えられていた。そこにはバラバラになった狗神憑が写っている。
「だがここ数カ月、犬上筋の外の者が次々に狗神憑を狩っていることが判明した」
出席している面々は眉をひそめた。伊花の娘のサクヤにいたっては信じられないといった表情を隠そうともしていない。この平成の世において
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