古狗
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逃さないと、さらに貫手の連続攻撃で狩人をとらえようとするもすべてが避けられる。
「フッ」
隙を突いた狩人の攻撃。砂蜘蛛の脇をすり抜け、わき腹にめがけてノコギリを下段から振り上げる。その刃は砂蜘蛛の肉に食いこみ、治癒不可能な傷を負わせた。
―――ギャッ!
砂蜘蛛はたまらず飛びのいて狩人から距離を置く。のっけから一撃を食らったことにより、砂蜘蛛の怒りは沸騰し始めていた。
「グルルァァァ! 犬上デモナイ俗物ガ、コノ俺様ニ傷ヲ負ワセルナド、片腹痛イワ」
砂蜘蛛は地面を人差し指の爪でひっかく。すると奇妙なことがおきた。地面に散らばっていた砂が、まるで落ちる砂時計の砂を逆再生するように、上に昇っていくのだ。やがてその砂は砂蜘蛛の傷口に集まり、止血を行った。
「グルルァッ! コレコソガ『月の力』ヨ。強キ『古狗』ノ証、脆弱ナ貴様ラ人間トハ違ウ」
砂蜘蛛は狩人をあざ笑う。
人妖や魔物の類の強さは、大抵はその生きた年月が長ければ長いほど強力になる。この地の獣は長い年月を経て、『月の力』を我が物とし、奇妙な術を行使できるようになるのだ。
砂蜘蛛の『月の力』は砂を操ること、変幻自在の能力だ。
「コノ俺様ヲ怒ラセタコト、後悔スルトイイワ!」
砂蜘蛛が地面の砂を狩人に向けて巻き上げる。砂は走狗となり、狩人へと襲いかかる。
狩人はステップでそれを回避。しかし続けざまに襲いかかってくる砂の走狗に対応ができなかった。砲弾のような圧力が狩人を襲う。
「ぐっ」
転倒はしなかったものの、相応のダメージを負い後ろに後退る。砂蜘蛛はそれを好機と捉え、更にいくつもの砂の走狗を出現させたばかりか、自らもその中に混じって狩人へと襲いかかる。
―――ガアアアッ!
狩人はステップで走狗を回避することはできたが、その肩に砂蜘蛛の爪を受けて肉がそぎ落とされてしまった。血が噴水のように噴出し、骨がむき出しになる。
「傷ヲ負ワセタ! ダガ貴様ヲ同族ニハセン! 細切レニシテコノ洞窟ノ地面ニブチマケテクレルワ!」
砂蜘蛛は両手を鳥のように広げ、強烈な蹴をもってして狩人を壁に叩き付けた。狩人は壁にめり込み、全身から血を流す。
これはヨーガにおける『荒ぶる鷹のポーズ』の応用、身体の重心を安定させて蹴の威力を一点に集中させる砂蜘蛛の妙技だ。過去に砂蜘蛛はこの技で同じく古狗であったライバルを何匹も葬ってきた。
「……」
狩人がめり込んだ壁から出てくる。しかし全身の骨にヒビが入り、内臓もやられている。肉体的損傷は大きく、彼の得意とする素早い動きもこれでは行使することができない。
「ソノ負傷デハ満足ニ戦ウコトモデキマイ。悪アガキハセズ、オトナシク俺様ニ殺サレルガイイワ」
砂蜘蛛
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