古狗
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でいく。
―――ガアァッ!
ある程度進んだ山道の途中、木の上から一匹の獣が狩人めがけて跳びかかってきた。だが狩人は何をする必要もなかった。すでに手に持った槍を頭上に掲げていたからだ。
―――ギャッ!
獣は口から槍を飲み込み、顎から股にかけてを割りながら串刺しの状態になって絶命した。狩人は血を浴びながらその亡骸を放り捨てる。
斥候の襲撃があったということは、根城も近い場所にあるのだろう。狩人は足早に先に進む。
◆
山の中腹にあたる崖、この下には洞穴があるのだが、これは天然のものではない。逃げ出した獣と数匹の下っ端が掘ったもので途中途中には崩れないように丸太で補強してある。
その最奥部に、その獣はいた。
「ぐぅるるぅぅぅ……オノレ、憎キ犬上……」
その獣は他のモノとは毛色が異なっている。大抵の下っ端獣が小汚い黒色なのに対し、この獣は砂色の毛並みであり、耳は大きくて垂れ下がっていた。
この獣の名は『砂蜘蛛』。八十と数の年を生きた古い獣である。
「コノ俺ガ、コンナ穴倉ニ潜マナケレバナラナイナド、コノ屈辱……イズレ晴ラシテクレヨウゾ」
砂蜘蛛はある一族への恨み言を吐きすてながら、肉を掴む。
「いや……いやぁ……」
それは女性、生きた人間であった。衣類の一切をはぎ取られ、若い肢体を露わにさせられた彼女の顔は恐怖と絶望にゆがんでいた。
砂蜘蛛は女性の手と足の両端を両手で掴み、トウモロコシでも食べるように彼女の腹に牙を突きさす。
「ひぐぅっ! ……が……ぎぃ……」
苦しむ女性は血を吐くが、砂蜘蛛はお構いなしにと顎に力を込めて彼女の内臓と背骨をかみちぎった。
「げぇっ! ……」
つぶれたカエルのような断末魔を一瞬だけ上げ、女性は絶命した。見るとそこら中で似たような行為が行われていた。ある女性は頭から食いちぎられ、ある女性は四肢を順番にゆっくり食われ、ある女性は尊厳を汚されながら食われていく。
この地の獣は人肉、とりわけ女性の肉を好んで食らう傾向がある。理由は不明だが。更に付け加えると、この地の獣は食わずとも数十年、数百年と生きることができる。糧を得るためではなく、酒やタバコの趣向品のような目的で肉を食らうのだ。
犠牲となっている女性たちは檻之宮の町から無理やり連れてこられたのだ。ただ一時の慰みのために、その命を奪われる。獣に捕まるとはそういうことだ。
砂蜘蛛は食いカスと化した女性の死体を放り捨てる。獣にとって一番美味いと感じる部位を食べ、あとは捨てる。それに女を取り損ねた下っ端が群がる。
「今ハマダ、屈辱ニ耐エ忍ブ時……イツカ、イツカアノ一族ニ復讐ヲ果タスマデハ……」
砂蜘蛛は牙と爪を研ぐ。あの一族の刃に対抗するために、密か
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