月下に咲く薔薇 13.
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引き受けた」と隼人は元来た方向を軽く指した。「大塚長官からの依頼があってな。相談役と護衛を兼ねてくれ、と言われている」
「あ、ありがとうございます」
口では謝意を唱えるものの、ミシェルの心境は複雑だった。それは皆も同じだ。
おそらく、クロウ達4人が大人しく部屋にこもっていなかった事を重く見た大塚が、頭が切れ戦闘力も高い人物を1人送り込んだ、という辺りが真相だからだ。つまり隼人は、相談役、兼護衛役、兼監視員としてここに来ている。
当然、今夜の異変についても隼人は多くを把握していた。
「聞いたぞ。クロウが消えたんだってな」
「それについては、中で」
肩幅の広い長身の男を部屋に入れると、2人部屋とはいえ随分と狭く感じるようになる。隼人は1人、入り口近くの壁にもたれかかり、クロウをじろりと観察した。
「消えた筈の人間が突然戻って来た、か。悪いが、俺は素直には喜べないな」
「早すぎるって事か、消えて帰って来るまでが」クロウは、隼人の抱く不審感に理解を示す。「そりゃあ、たった40秒じゃな」
「ああ、そうだ。お前は本当に、俺達がよく知るクロウ・ブルーストなのか?」
他の4人が目を見開く中、クロウは至極冷静に対応する。
「勿論さ。もし何なら、前回の査定で俺が幾ら返済したか明かしてもいい。それとも、ブラスタに乗ってSPIGOTを使いこなした方が信じてもらえるってんなら、やるぜ。『揺れる天秤』は、唯一無二な代物のようだしな。好きな方を選んでくれ」
「じゃあ、返済額の方を聞かせてもらおうか。トライア博士に照会を依頼すれば、本当か嘘かはすぐにわかる」
クロウは、ふうと息をついた。
「48万9990Gだ。1万10Gピンハネされた時の額でな。妙な端数が出てるからおかしいとは思ったんだが…。あ、まずい。盛り下がってきた」
「何だって!? お前、ピンハネされたのか」
ロックオンが向ける憐憫の眼差しが、クロウの顔の右半分に刺さる。
「完全に尻にしかれているな」とクランが呆れれば、「その落ち込み具合、どうやら本物のようだな」と隼人が金額の照会をする前から納得する。「疑って悪かった」
罪悪感という言葉とはまるで無縁な凄みを含んだまま、隼人が形式だけの謝罪をした。
「いいって、別に」
疑われた側のクロウとしては、形式の方を重視し非礼を許すしかない。
隼人は、獣戦機隊にも通じるヒトとしての生命力と勘を持ち合わせており、その上に知性を積み増したゲッターチームの頭脳だ。自らの勘を「竜馬には劣る」と卑下するが、なかなかどうして今回もしっかりと機能し、今尚密かにクロウが40秒で現れた事に疑問を抱き続けている。
アポロの勘を野生のそれと解釈するなら、ゲッターチームの3人にあるものは感性と経験の紡ぎ出したプロの勘と言うべきか。前者はアポロの持つ
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