月下に咲く薔薇 13.
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れた。そもそも順番が逆なんだよ」
「じゃあ、あの手は…」
周囲が話のその先を待っているのもお構いなしに、突然吹き出した記憶の水流にクロウは思わず溺れかける。
手、そう手だ。クロウを掴んだあの手を最初はロックオンのものと受け止めていたが、今ならば違うとの確信がある。掴まれる直前に見た赤い光を、何故不快なものと捉えたか。その理由にも繋がってゆくから間違いない。
白銀の掌に尖った指先。あれは、アイムが駆るアリエティスの特徴だ。下面から滲み出た赤い光は、アリエティスが高出力攻撃を繰り出す際に放つ光と酷似している。
ロックオンの声を聞いたのは、なるほど確かに、あの巨大な手の中で窒息しかけた後だ。もし、青い異世界が夢の産物でないのなら、仲間達の声が届くところまでクロウを引き上げた介入者が別に存在した事になる。
全ての条件を満たす人間は、世界に1人きりではないか。スフィアの一つをクロウ以上に使いこなし、次元の境界にさえ干渉する離れ業をやってのける能力者。
「アイムだ。…あの野郎の仕業に間違いねぇ」
何を今更と呆けている4人に、クロウは謎の体験について話して聞かせた。ばらばらになったライノダモンの破片と、それを縦横無尽に縫い合わせる白い糸の事なども見た限りを。
記憶を絞り出したと実感する程、全てを話したと思う。しかし、勢いに任せ吐き出してしまうと、代わりに釈然としないものが生まれクロウの中に居座ってしまう。
もやもやとした不味感が残るざらついた感覚だ。似ているものを敢えて探すなら、嘘をついている時の後ろめたさ、に近い。
そして、その点についてもクロウは敢えて付け加えた。
「すまないな。今の内容を話半分くらいに聞いてくれ。…何だか、話した後味が良くない」
短く唸った後、ロックオンが空中で掌を裏返す。
「夢か嘘か。それとも事実か。…随分と微妙な体験だな」
「微妙すぎて、話した事を後悔してる」
嘘。夢に近い記憶について語る事は、嘘をつく行為とよく似ている。見たものと感触が合致しないような世界は、夢の領域に入るからだ。
ただ、クロウの勘は告げていた。声に出したくはないが、妙な自信さえある。
少なくともこれは、アイムの仕掛けた嘘ではない、と。
言葉、気配、様々なものを操り、あの男は人を巧みに騙す。その技は神がかっており、用心深い個人や集団を手玉に取るなど、奴にとっては造作もなかった。
小細工から大がかりなものまで何でもこなす。あの青い世界はアイムやインペリウムによる虚偽の産物と解釈した方が自然な筈なのに、クロウの中で何かがひどく勘に障る。
その葛藤を、ロックオンとミシェルが巧みに看破した。
「お前」とロックオンの声が低くなる。「アイムに会ってから、少しおかしいぞ」
クロウが返事に窮していると、意外な助っ人
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