月下に咲く薔薇 13.
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も、そいつは御利益の多い平手打ちのおかげだろ。文句は言えねぇ」
「…OK。そういう減らず口が叩ければ上等だ」
自力で立ち上がって尻の埃を払い、クロウは念の為に頭のふらつきや手足の異常を探ってみる。曲げては伸ばしあちこちに触れてみると、幸い痛みを訴える場所はどこにもない。
クロウの様子に安堵したのか、ミカが表情を曇らせやや不満そうにミシェルへと向き直る。
「この件はすぐに報告すべきよ」
「勿論、俺もそう思うさ。するなって話じゃない。ただ、警報を鳴らして基地全体を動揺させるのは今避けたいんだ。もし敵がバトルキャンプに残っているなら、それは絶対裏目に出る」
ミカは黙し、ナオトと視線で何かを確認しあった。
「なら、俺が直接大塚長官のところまで報告に行く」
ナオトが足早にその場を去ると、クランが腕組みをし眉を寄せる。
「ええい! 何だか面白くないぞ。不意打ちを食らって計画を台無しにされた気分だ」
「そ、そうか…悪い」
自分が巻き込んだとの負い目から、クロウはつい謝ってしまう。
「お前が頭を下げてどうする?」
それをクランにつっこまれ、苦笑いをしつつ肩を上下させた。
「計画を台無しに、か…。なかなか上手い事を言うな、クラン」
意味深長な笑みをするミシェルに、「それってティファの話を聞く事か?」とロックオンが先程まで進むつもりでいた方向を指す。
ミシェルが小さく首肯した。
「だから、ティファを訪ねるのは今はやめておこう。もし、無策の状態でティファを巻き込む事にでもなれば、その影響の方が数段怖い」
「ま、敵の言いなりになるみたいで癪だがな。俺も、クロウを一旦部屋に戻す事には賛成だ」
顔を歪ませた後、ロックオンも些か不本意な様子で提案に同意する。
「俺なら、もう平気だぜ。華麗にバック転でも披露したら納得してくれ…る…か?」
無事である事を強調し、クロウは自身の胸を拳で軽く叩く。
ところが、ミシェルとロックオンの耳に軽口は全く届かなかった。2人は視線を人輪の外に向け、類似した顔つきのまま微動だにしない。
単に、周囲を探っているのではなさそうだ。2人はコクピットに座る事なく、しかもライフルを持たない状態で狙撃モードに突入していた。何かを探る彼等は今日何度も見かけているが、目の当たりにしている本気度は午前や外出時の比ではない。
超一流スナイパーの感覚だけを頼りに、神出鬼没なアイムを探り出そうとしているのか。今の意気込みならば、空気の流れを切って開きその裏面までもを覗き込む事ができそうだ。
バラ1輪が現れた消えたの騒ぎではなく、遂に人間が連れ去られた。おそらくは、そういう事態と受け止めているのだろう。側にいながら異変の兆候一つ察知できなかった悔しさが大きければ、2人が本気になるのも当然だ。
クロウとクラ
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