プロローグ
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「……!」
──果たして、銀の少年は何を思ったのか。
癖毛の少年神は、知っているのだろう。銀色の少年が、『自己の死』という概念を恐ろしく嫌っている事を。他人の命を奪うことに慣れすぎた彼。己の死によって新たな生を得た彼は、もう一度死ぬこと、己のてにかかってきた者達と同じ下位の存在に『戻る』事を、極度に嫌う。
それは傲慢だ。強欲だ。暴食だ。
だが、届きはしない。
今彼の目の前にいる『神』は、そのすべてを従えたる天の玉座なのだから。
「……何を、すればいい」
少年は、神に問う。
「簡単さ。世界を救えばいい」
神は、少年に告げる。
「今、キミが『捕食』してきた剣の世界は未曾有の危機に襲われている。何者かの手によって因果率が壊れ、このままでは取り返しのつかないことになる」
簡単に言えば、と、神は続けた。
「『オリジナル』が、『セカンド』に食われる」
「……?」
「僕たちは、これまでオリジナルを侵食し続けてきた。その結果として、オリジナルに異分子が混じりすぎたんだよ。それは悪いことではない。それだけなら、無数の平行世界として存続できるから。どれだけオリジナルよりも強くなったって、オリジナルを越えることはできない。だがもし、それらが『世界すら越える力』を手に入れたなら? オリジナルを殺害するために、世界を掌握し始めたら──?」
答えは、明白だ。
「世界は死ぬ。無数の平行世界ごと、ビッグクランチの彼方へと集束する。それは許されない。赦されない。あってはならない事態だ。外側から世界を読む僕たちにとっても、内側から世界をいきるキミたちにとっても」
だから。
「キミには、世界を救ってもらうよ、天塚神。世界を破壊してきたキミが世界を救う──かつて古きバビロニアの太陽神が、戒律の王に授けた法のごとく」
目には目を、歯には歯を。毒を以て、毒を征す。
「今こそ、英雄になるときだ。行ってらっしゃい、『英雄』ジン」
そしていつのまにか銀の少年──ジンの足下には、虚空。何処かへと繋がったそれは、恐るべき吸引力で彼を引き込む。使命へと。無限の旅へと。
──と、ここで。ジンは大事なことに気がついた。
「……ちょっと待て、あのいい口からすると、向こうでは戦闘も起こるな?」
「うん」
「今の俺、素手だな?」
「うん。捕食能力も取り上げたよ。スキルもまっさら」
なるほど。なるほど。
「ッざけんじゃねぇぇぇぇぇ!!! スキルかえせぇぇぇぇッ!!!」
「だが断る」
「この野郎ォォォォ───………」
かくして。
旅は、始まった。
|偉大なる太
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