プロローグ
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「あーあーあー、なんてこったい」
日光照らす縁側で。
一人の少年が、忌々しそうに……しかし何処か楽しそうに、そう呟いた。
彼に膝枕をしていた白い少女が、微笑みながら少年に問う。
「どうかなさいましたか? お兄様」
「こいつを見てくれ」
少年が右手を振るうと、何処からともなく半透明の羊皮紙の様なものが姿を表す。そこに書き込まれていたのは、地上のどこにも存在しない文字で書かれた、どこにも存在しない数式。
「これ……因果が、崩れてる?」
それを覗き込んで、今度は少年が膝枕をしていた、銀髪の少女がそう漏らす。
普段は眠たげに落とされている瞼は、今ばかりは驚きに、本の少しだけ何時もよりも上げられていた。
彼女の答えに、少年は我が意を得たり、とばかりに微笑んだ。
「そうだよ。何があったのかまでは知らないけど──随分とメチャクチャにしてくれたみたいだ。このままじゃ『原典』が成り立たなくなって、滅びる世界が出てくるだろう」
そうなってもらっちゃぁ大変だ。
少年はくつくつと笑いながら、そう言った。
「でも、だとしたらどうするつもりなんですか?」
まさか貴方が自ら出る、何て面倒なこと、するわけがないでしょうに────
そう、白髪の少女のとなりに座る、くせ毛を纏めた少女が問う。彼女は知っている。この少年が、こういう事態にたいして、首は突っ込むが直接手を加えることはない、真正の面倒臭がり屋である、ということを。
「うーん、そうだねぇ」
悩ましげに首を捻る少年。
しかしここにいる全員が分かっていた。もうこの少年には、何か考えがあるのだ、と。
──それも、とびきり悪趣味で、奇怪で、理不尽な、そんな策が。
「ああ、そういえば」
──ほら。
「丁度、こういう事態と良く似たことを引き起こす奴を『封印』していたなぁ」
──やっぱり、そうだ。
にたり、と笑う少年は、右手を掌を上に向け、すっ、と何処かに差し出すと、冷たい、しかし楽しそうな、そんな声で呼んだ。
「ノイゾ」
「──ここに。我が兄」
縁側に植えられた木々の影が、どぷん、と不気味な音をたてて揺れる。まるで水面のように変質したその漆黒の中から、青と黒の少女が姿を表した。
その髪は、水の青でも、空の青でもなく。
その外套は、影の黒色に染まり。
紅蓮の瞳を愉悦に漬けて、彼女は己の主を見る。
「『あれ』を解放する。呼び出せ」
「了解しました」
くつくつくつ、と、不気味な含み笑いと共に、青黒の少女はその手を振るう。
──瞬間。
彼女の足元の闇が、揺れた。それは周囲を侵食
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