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絵に込められたもの
3部分:第三章
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どうして私がここに」
「御前だ」
 田山は異様に浮き出た目で呟いた。
「御前が家族を。私の家族を殺した。わかっている」
「私が私を見ている」
 その時杉原は見た。何と絵が動いているのを。絵は自分と同じ顔を持っている女を見て笑っていた。不気味なまでに恐ろしい笑みを浮かべて立っていたという。
「あの時の様に」
「あの時の様に!?」
「鏡だ」
 また田山は呟いた。
「鏡に残っていた御前の姿だ。私はそれを描いたのだ」
「馬鹿な、そんな筈がない」
 杉原はすぐに彼の言葉を否定した。
「鏡に映っていたとしても。すぐに消える筈だというのに」
「私は見た」
 田山の呟きは続く。
「御前の姿を。そしてわかっていたのだ、御前が何時何処に出て来るのか」
「そんな、こんな・・・・・・」
「見ろ、己の顔を」
 杉原は女を見つつ言った。
「己の醜い顔を。とくと見ろ」
「ああ、ああ・・・・・・」
 女は呻いたまま倒れた。そしてその場に倒れ込み動かなくなった。心臓が止まり息を引き取ってしまったのだ。絵は何時の間にか元の姿に戻り動かなくなっていた。だが女はこれで完全に息絶えてしまったことは事実でそれが変わることはなかったのであった。
 その後警察の取調べで女は指名手配中の連続殺人犯だとわかった。強盗だけでなく殺人に快楽を見出す所謂快楽殺人者だった。田山の家族はその快楽殺人者の犠牲となったのだった。そのことがわかったのは女が死んでからずっと後のことであったのだった。

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