暁 〜小説投稿サイト〜
俺と乞食とその他諸々の日常
最終話:俺と乞食とその他諸々の日常
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
こで完成させる」

 傷ついた右腕を下げ完全に片腕を捨てた構えを見せる。
 防御など考えもしない。この一撃に全てを賭ける。
 エクスヴェリナもその覚悟を感じ取ったのか左のサーベルを鞘にしまい左手をサーベルに添えて突きの構えを見せる。

「よかろう、我が必殺の技で沈めてやろう」

 彼女にとっての最強の技は最速で放つただの突きである。
 オリヴィエを抜けばベルカ最速と称された機動力に裏付けされた突きは数え切れないほどの心臓を貫いてきた。
 凝った技は必要ない。戦場で遭った敵を確実に、最速で殺すために編み出された技。
 全ては相手を殺すためにある剣術。それが彼女の必殺。

「……ありったけの魔力を左手に」

 一方のジークは全身の魔力を左手に一点集中させる。
 人体破壊技術の継承者にして遂行者であるエレミア。
 しかし、彼女は壊すことを望まない。誰も傷つけずに無力化させる。
 500年の中で破壊の技術を育んできた一族に背を向ける様な技。
 それを彼女は求めた。
 極限まで密度を高めた魔力をぶつけ流し込むことで相手の意識だけを刈り取る技。
 技とも言えぬ技であるが現状考えられる策ではこれが最善であると判断した。

「ノルマン王国、元国王エクスヴェリナ・V(ヴォート)・ノルマン……参るッ!」

「ベルカ最古の人体格技、エレミアの末裔、ジークリンデ・エレミア……行くでッ!」

 脳のリミッターを外し掻き消える動き始めるエクスヴェリナ。
 もはやジークの目では捉えられない。しかし目で捉える必要などない。
 突きとは直線の技。真っ直ぐにしか放てない。そして狙いは自身の心臓。
 ならば、恐れる必要などない。真っ直ぐに前に進み出て左拳を突き出す。
 そこに銀色の閃光が如き刃が迫って来る。ジークの肌に突き刺さる濃厚な死の予感。
 だが、ジークが力に呑まれることなどない。本当に大切な者を救うのだから。



(ウチ)の―――(ウチ)らの恋路の邪魔すんなやーッ!!」



 黒い拳が銀の刃をすり抜けエクスヴェリナの胸元に触れる。
 その瞬間に“リヒター”の体を貫いて魔力光が噴出される。
 そのまま辺りは光に包まれていくのだった……。





「ご先祖様め……無理やり体を動かしたな、おかげで体が動かん」
「まあまあ、終わったんやし許してやったら?」
「そうは言ってもな……。大体勝負を挑んだ本当の理由がジークが嫁御に相応しいか調べるためだと? あんたは俺の母親か!」

 病院のベッドの上で無理をさせられて全身筋肉痛になった体に顔をしかめるリヒター。
 ジークの腕は完治したのでベッドの横でリンゴの皮をむきながら笑顔で応える。
 だがリヒターはエクスヴェリナの真の目的が
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ