圏内事件 5
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ここでようやくヒースクリフの口角が元に戻り、同時にマサキが眉間に皺を寄せた。
ヒースクリフが続ける。
「かつて私が君を血盟騎士団に誘った時、君はこう言って断った。「他人に深入りするのは性に合わない」。事実君は、その後どのギルドにも属さずに来た。だから、私は今まで、君は他人というものに興味を抱かない人間だと思っていた。しかし君は今回キリト君とアスナ君から要請を受け、直接は関係のない、赤の他人のために事件の解決に乗り出した。……私はそこが気になったのだよ。君は何故今回に限って、そこまで他人のために身体を張る?」
しんと空気が静まり返った。ヒースクリフが何かを口にすることはなく、マサキもまた、何のいらえも返さない。ただ少しだけ顔を下に向け、軽く目を瞑って考え込んでいた。
エミ、キリト、アスナ、ヨルコ。今回関わった人間の顔が走馬灯のように駆け巡る。
「……もし今回の事件が本当にコードを無効化して行われたものであったなら、その対策を練ることは俺自身の安全を確保するためになる。自分の命が惜しいなら、協力して損はない」
ゆっくりと目を開け、マサキは床に敷かれた絨毯の模様を眺めながらぼそぼそと喋った。ヒースクリフに見えないよう、もう少し余計に顔を地面に向け、口角を上げて表情筋を固定する。
全ての選択肢を否定した結果即興で作り出した嘘だったが、不思議とそれが一番しっくりくる気がして、マサキは自然と笑っていた。
「本当に、それだけかい?」
「ああ。……他に、一体どんな理由が有る?」
マサキは声のボリュームと一緒に、表面に冷淡な笑みを貼り付けた顔を上げた。
これ以上なくマサキらしい笑顔だった。
ずっと、何も変わらない。自分はそういう奴だ。
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