圏内事件 5
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
問いかける。二人は突然マサキまで加わってきたことに驚きつつも、首を捻りながら答えた。
「……基本的にオブジェクト化されたアイテム類は所有者の足元に落ちることが殆どだけど……。ごめんなさい、わたしもそこまで細かくは……」
「でもマサキ君、それがどうかしたの?」
エミが聞き返すのを、マサキは僅かに目を伏せながらじっと聞いていた。そして、そのまま口元に手を当てて数秒黙考すると、今度は一気に言葉をまくし立てる。
「黄金林檎のリーダーは、グリムロックと婚姻関係にあった。つまり、二人のストレージは共通、アイテムの所有権も二人が保有していた。その状態でリーダーが死亡した場合、ストレージの容量は一気に減るだろう。そこでもし、入りきらなかったアイテムが所有者の足元でオブジェクト化されるとしたら……指輪は、グリムロックが手にしたことになる」
「えっ……じゃ、じゃあ……」
「指輪は……奪われて、いなかった……?」
「……いや、違う。前提条件が仮定でしかないが、グリムロックは、自分のストレージにあった指輪を奪った。グリムロックは、今回の事件ではなく、半年前の指輪事件の真犯人だった可能性が高い」
マサキが告げると、アスナとエミが目を見開いて驚愕した。アスナが左手に握っていたレイピアが落ち、床に転がって重たい金属音を響かせる。二人と比べてキリトの反応が小さいのは、ある程度この推測が予想できていたからだろう。そのキリトが、再び緊張で重みを増した空気を押しのけて声を出した。
「だとすると……マズいぞ。この圏内事件のトリックを知っていたのなら、その途中で指輪事件の真相を知られるかもしれないと感付くはずだ。それなのに、ヨルコさんたちに協力したということは……」
「……口封じ。半年前の事件を全て、今度こそ闇に葬る腹積もり、か」
「……っ! わたし、団長に死別時のアイテム処理がどうなるか、メールで聞いてみる!」
叫ぶように言って、アスナはホロキーボードに指を走らせる。が、突然ハッと何かに気付いたように顔を跳ね上げると、はしばみ色の瞳を絶望で暗く染め、頬の筋肉を硬直させながら激しく首を左右に振った。
「……ダメ。多分、団長はまだ装備部との会議が終わってない……もう終わりが近くなってはいると思うけど、それでも後二十分くらいはかかるかも……」
「……さすがに、そんなには待てないな。ヨルコさんたちには悪いけど、現場に行ってみるしかないか」
「でも……レッド、ギルド……の、構成員が来てるかも知れないんでしょ? もし戦闘にでもなったら……わたしたちだけで大丈夫かな……?」
「そりゃそうだけど……確証があるってならともかく、今の段階じゃあな。骨折り損になっても許してもらえそうなお人よしで、なおかつレベルの高い攻略組というと……」
神妙な顔
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ