圏内事件 5
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ナ。お前、結婚してたことあるの?」
――何を言ってるんだ、こいつは。
唐突に発せられたキリトの不躾も甚だしい質問に、マサキは脳の回転がブチッと音を立てて切れたのを自覚した。呆れ返ったマサキが首を振りながら額を手で支えた時には、既に隣ではアスナが攻撃予備動作でキリトに返答していた。
「うそ、なし、いまのなしなし!! ちがうんだ、そうじゃなくて……お前さっき、結婚について何か言ってたろ? ほら、ロマンチックだとかプラスチックだとか……」
「誰もそんなこと言ってないわよ!」
両手を顔の前でブンブンと振り、一度は殴られる寸前で最悪の事態を回避したキリトだったが、結局犯罪防止コードが発動しないギリギリの強さでスネを蹴飛ばされてしまった。それを見て、呆れたような苦笑を浮かべていたエミが助け舟を出す。
「プラスチックじゃなくて、プラグマチック。実際的って意味だよ」
「実際的? SAOでの結婚が?」
キリトが聞くと、アスナは「ふんっ」と鼻を鳴らして答えた。
「そうよ。だってある意味身も蓋もないでしょ、ストレージ共通化なんて」
「ストレージ……共通化……」
――『アイテムストレージ共通化』。その単語を耳にした途端、マサキの頭が再び高速で回転を始める。そして、この喉に魚の小骨が刺さったような感覚の出所は、今キリトが口にしたその単語だ。
プレイヤー同士が結婚すると、その二人のアイテムストレージは完全に統合される。所持容量限界は二人の筋力値の合計分まで拡張され、二人の所持アイテムも、コルも、全て夫婦共有の財産として処理されることになる。それは大変な利便性をもたらすと同時に、レアアイテムの持ち逃げや浪費、結婚詐欺等に遭う危険性も孕んでいる。
それ自体は、特別な知識でもなんでもない。一般的なSAOプレイヤーなら誰もが知っていること。しかし、その何処かにまだ発見できていない「何か」があると、頭の中で言いようのない気持ち悪さが訴え続けていた。
「じゃ、じゃあさ……、離婚したとき、ストレージはどうなるんだ……?」
「……!」
キリトの質問が、ハンマーの如き衝撃でマサキの頭を揺さぶった。
黄金林檎のリーダーは、グリムロックと婚姻関係にあった。つまり、超レアアイテムの指輪は、黄金林檎のリーダーとグリムロック、二人の共有ストレージに保管されていたことになる。そして、そのリーダーは殺された。その時、指輪をシステムはどのように処理したのだろう……?
「確か……幾つかオプションがあったはずだよね?」
「えぇ。自動分配とか、アイテムを一つずつ交互に選択していくとか……わたしも、よく覚えてないけど……」
「……離別じゃない。死別だ。死別の時はどうなる?」
顔を見合わせて唸る女子二人に、今度はマサキが
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