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戦国異伝
第二百二十七話 荒木謀反その一

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                       第二百二十七話  荒木謀反
 徳川家の噂が消えたら今度はだった。
「荒木殿がか?」
「最近動きがおかしいというのか」
「居城に鉄砲や兵糧を集められ」
「塩も盛んに買われているとか」
「まさかとは思うが」
「うむ、まさかな」
「謀反か」
 この言葉が自然に出て来た。
「謀反を起こされるおつもりか」
「織田家に対して」
「荒木殿は織田家の重臣じゃが」
「いや、重臣でもな」
 ここでだ、誰かがこう言った。
「あの方は尾張者ではないぞ」
「そういえばそうじゃ」
「織田家代々の方ではない」
「そして美濃の方ではない」
「摂津の方じゃ」
 この国の者だというのだ。
「織田家にしてみれば外様の方じゃ」
「そうじゃったな、外様の方じゃった」
「外様ならば風当たりも違う」
「どうしてもそうなる」
「それでか」
「織田家の中で浮いておられて」
「讒言もされたか」
 こうした言葉も出て来た。
「では謀反もか」
「家中で追い詰められてか」
「そのうえで起こされるのか」
「若しやと思うが」
「そうされるおつもりか」
「荒木殿は」
「そうされるのか」
 実に怪しい噂だった、だが。
 何故かこの噂は広まりだ、そして。
 荒木は自身の妻子及び縁者達を己の前に集めてだ、こう彼等に告げた。
「わしは御主達と縁を切る」
「なっ、まさか」
「その用なお戯れを申されますか」
「ご冗談でしょう」
「幾ら何でも」
「戯れではない」
 荒木は驚く彼等に峻厳な声で答えた。
「このことはな、皆わしの前から去るのじゃ」
「では最早一族の者ではないと」
「そう仰るのですか」
「そうじゃ、そしてじゃ」
 荒木はさらに言った。
「わしは今から頭を剃る」
「では出家を」
「出家もされますか」
「うむ、そうじゃ」
 こうも答えた荒木だった。
「わかったな」
「いえ、わかりませぬ」
「急にそう申されましても」
「殿、まさか」
「まさかと思いますが」
 荒木の妻子もだ、縁者達のうち幾人かもだった。
 事情を察してだ、こう荒木に問うた。
「謀反を」
「謀反を考えですか」
「上様への」
「答える必要はない、しかしじゃ」
 それでもと言うのだった。
「御主達はこれよりじゃ」
「縁はないと」
「そう仰言いますか」
「殿とは」
「すぐにこの城を去るのじゃ」
 こう告げてだ、荒木は妻子だけでなく全ての縁者と縁を切ってだった。彼等を城から追い出してだった。そうして。
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