第五幕その四
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「何かね」
「何かって?」
「うん、シェラスコって牛肉ってイメージがあるよね」
こう親友の臆病ライオンにお話するのでした。
「実際牛肉を使うことが多いじゃない」
「確かにそうだね」
「けれどこうした羊肉のシェラスコもね」
「マトンだね、これは」
「いいよね」
つまり美味しいというのです。
「中々ね」
「そうだよね、羊も美味しいからね」
「そういえばね」
トトもそのシェラスコを食べています、お野菜はサラダがあって林檎や蒲萄のジュース、それにパンもあります。
「皆はマトンでも食べるけれど」
「どうかしたの?」
「匂いが気になるっていう人もいるって聞いたよ」
「あっ、それ恵理香だよ」
ジョージはトトに恵理香を見て答えました。
「恵理香は最初そう言ってたね」
「ええ、皆とはじめて会った頃はね」
実際にとです、恵理香はジョージに答えました。
「私マトンの匂いが苦手だったの」
「美味しそうな匂いなのに」
「味は好きだったけれどね」
それでもだったというのです。
「マトンの匂いは苦手だったわ」
「そうだったんだ」
「あまりね」
どうしてもというのです。
「馴染みのない匂いで」
「そういえば日本人羊あまり食べないね」
「それで匂いもね」
「慣れていなかったんだね」
「そうだったの」
かつての恵理香は、というのです。
「あまりね」
「成程ね」
「今は大丈夫だけれど」
「最初は駄目だったんだね」
「ラムは大丈夫よ」
子羊のお肉はというのです。
「好きよ」
「そうなのね」
こうしたことをお話してでした、そしてです。
恵理香はそのマトンのシェラスコを自分でも食べて言うのでした。
「もう一皿ね」
「今では平気なんだね」
「何かこの匂いが」
それこそとです、恵理香はトトに答えました。
「かえってよくなったわ」
「マトンの美味しさがわかったからかな」
「そうだと思うわ、それが美味しいってわかったら」
「その匂いもね」
「美味しい匂いって思うのね」
「そうだと思うよ」
こうしたことをお話してでした、そしてです。
恵理香も皆もお昼御飯のシェラスコを楽しみました、その後で。
皆午後は何をしようかとお話していた時にです、急にです。
外で雷の音が聞こえてきました、それも一つや二つではなくです。
幾つも、それもひっきりなしに聞こえてきました。その音を聞いてです。
ジョージは三回位瞬きをしてからです、こんなことを言いました。
「ううん、大丈夫かな」
「このお家は雷を出す雲より上にあるから」
だからとです、ポリクロームがジョージに答えました。
「心配いらないわ」
「そうなんですね」
「ええ、その証拠に雷の音は下から聞こえるわね」
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