1部分:第一章
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亡骸を見て母や姉達の嘆く有様は酷いものであった。
大切な息子、弟を亡くしたばかりでなく敵討ちの望みも消えたかと思われた。ところが彼女達は諦めきれなかった。必死に鬼七郎の亡骸にすがり付いて泣き叫ぶのであった。
そうして言うのであった。
「いつも言っていたことを忘れないでおくれ」
まずはこう告げる。返事をしなくなった鬼七郎の亡骸に対して。
「草の陰でも忘れることなく敵討ちをするんだよ・もしそうでなければ勘当じゃ」
「その通り」
「そうよ」
姉達も彼にすがり付いて泣き叫んで言う。
「御前の太刀はお父上の形見。それをいつも持たせていたじゃない」
「その太刀を渡しておくから」
鬼七郎の亡骸に本当に手渡す。
「必ずだよ」
「敵を討っておくれ」
そう泣き叫ぶのだった。藩の者達はそうした彼女達の姿を見て深く同情せずにはいられなかった。それと共に彼女達が女でなければとも思うのだった。
だが鬼七郎が蘇るだけではなく岡沢も何もなかった。その彼の大阪の屋敷の前に夜に中津藩の大崎という男が通り掛った時であった。
「もし」
不意に後ろから声がかかってきた。
「何用か」
声がした方を見る。するとそこに十四程の元服したばかりの少年がいた。彼はじっと大崎を見詰めていたのだった。
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