暁 〜小説投稿サイト〜
フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち〜
Extra episode
Thief and Assassin
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・ふん」

 ロングビルを怒らせたようだが、一切反省はしない。
 恨みや憎しみが何になると説いたが、それは決して善意からくるものではなかった。

「くだらないんだよ、そんなの。」

 正直、アイツが激昂した時に言ったことはほとんど理解できなかった。生きるの辛くなるのだったらとっとと止めちまえばいいだけの話だろうが。

「ま、これで件の犯人はあいつだってことは分かったがな。」

 彼女が時折、夜中どこかへ出かけていくのは知っている。更に、ここ最近貴族の間にだけ出没する盗賊の話も。

「その生きるための手段がこれか。全く本当に下らない。」


『アンタは一体何のために生きてるっていうの!?』
「・・・・・。」

 先ほど彼女に言われて、ふと思い出したくもない生前の記憶が蘇ってきた。

「生きる目的、ねぇ・・・。」

 どこか遠い目をしながら呟いた一言は誰にも聞かれることなく空気に溶けていった。



 そんなもの・・・とっくの昔に失くしちまったよ。









「まったく、ミス・ロングビルも困ったものですなあ、寝坊などとは。」

 翌日、コルベールはロングビルの部屋を訪れていた。今彼が言ったように、朝になってもロングビルが学院長室に現れなかった。どうせ寝坊だろうと、オスマンはたまたま別件で来たコルベールに彼女を呼んでくるよう頼んだのであった。

 コンコン
「ミス・ロングビル、いますか?」

 ・・・・・

 何も返事がない。不思議に思ってこっそりと探査の魔法を使ってみたが、部屋の中には人の気配すらなかった。

「!開いている・・・」

 さらには部屋の鍵も開いていた。女性の部屋を除くというのはいささか以上に気が引けたが、確認のためにも彼はドアを開けた。

「ミス・ロングビル?」

 中は彼の予想通り、もぬけの殻であった。








 くそっ、油断した・・・!そう思いながら歯噛みした。
 成金として名高い貴族の館に忍び込んだはいいが、思いのほか警備のトラップが激しく、ついには捕らえられてしまった。少し、昼間のイライラで緊張が緩んでいたのかもしれない。今は手足を縛られ地下牢に入れられている。

「ほうほう、これが最近貴族の間で出る盗賊という奴か。」

 数人の部下を引き連れて現れたのはこの屋敷の主。如何にも貴族らしいデブった男だ。

「しかしまさか女だったとはな。どうだ、盗賊なんてやめて今後はワシに仕えてみんか。報酬もそれなりにくれてやるぞ。」

 いやらしい目で私の体を舐めまわすかのような視線を送ってくる。目を合わせなくたって醜悪な雰囲気が感じられた。

「はっ、誰がアンタらみたいな下賤なヤツにつくか。冗
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