一話:正義の味方
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(初めからその予定ではやての養父になった。闇の書の悲劇を止め犠牲を無くすためにね。君も分かっているだろう)
(それは……分かっているけど)
(最も身近で監視ができ、最も怪しまれない、そして裏切った際に最も絶望に落としやすい人物―――それが親だ。それ以外に親になった理由なんてない)
ロッテに言葉を続けさせないように無表情で一気に言い切る切嗣。
はやてに語ったことは殆どが真実を混ぜた嘘だ。
まず、第一に切嗣ははやての実父とは無関係だ。戸籍を捏造しただけだ。
そして傭兵をしていた時期もあるがフランス軍になど属していない。
どちらかと言えば殺し屋だ。
ただ一つ事実があるとすればそれは魔法使い、魔導士であるという事だけだ。
(危険なロストロギアを無断に使用する人物がいるなら被害が出る前に殺してでも回収する。それが衛宮切嗣という男だというのを忘れたのかい?)
(……父様がこの世界で拾ってきてからあんたは全く変わんないね。
機械のようで―――ちっとも機械になれない)
そろそろ暑い季節になるというのに冷たい風が吹き抜ける。
熱い吸い殻が風に吹かれて地面にポトリと落ちる。
話はここまでだと言うように立ち上がり切嗣は家に向かい歩き始める。
その背中にロッテの言葉が突き刺さる。
(あんたは悲しい程にあの子を愛する父親だよ)
例えこの手で殺すと決めていても償いでも何でもなく最後のその一瞬まで最大の愛情を注いで育てる。
そんな彼を父親と呼ばずに何と言うのか。立ち止まった切嗣の表情は見えない。
だが、ロッテには分かった。苦しみを浮かべるべき顔にはなにも浮かんでいないことが。
衛宮切嗣は既に迷いを捨て覚悟を決めていることが。
(大丈夫だよ、ロッテ。……世界の為なら僕は愛する娘だって殺せる。だってそれは―――)
―――間違いなく正義だから。
それだけ口に出して言い残し彼は闇の中に消えていく。
死ぬべき運命にある者が殺され、死ぬ理由のない人たちが救われる。
これを正義と呼ばずに何と呼ぶのか。
もしも世界を変えられる奇跡がこの手に宿るなら―――僕は“正義の味方”になりたい。
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