一話:正義の味方
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終わり八神親子に対して結果が伝えられる。
医師の石田先生は原因不明の病に自分の力が及ばないことに苦い思いをしているが患者の前なのでそれを顔にださない。
「でも、諦めないで。良くなる可能性だって十分にあるんだから」
「石田先生がそう言うんなら安心できますわ」
「切嗣さんもしっかりと支えてあげてください」
「勿論ですよ」
最後に激励の言葉をかけてもらった後に二人は診察室から出て行く。
はやては少ししんみりとした空気を変えるためか今日の晩御飯のメニューを相談する。
そのせいか、受け答えをする養父―――八神切嗣が苦悶の表情を浮かべているのに気づくことができなかった。
「そう言えば、おとんって傭兵やったんよね?」
「うん、そうだよ。それがどうかしたのかい?」
今でこそ休日の情けない父親の代名詞のような切嗣だが実は彼はその昔フランスの外人部隊で傭兵をやっていたとはやては聞いている。
厳密には傭兵ではないのだが詳しく言っても仕方がないのではやてもあまり知らない。
もっとも始めは半信半疑だったはやてだったが、切嗣の鍛えられた体と凄まじい運動能力を見て信じざるを得なかった。
「いや、どんなもん食っとったんかなーて、思ーてな」
「………聞きたいかい?」
ニヤリと笑ってそう尋ねる切嗣に嫌な予感がするはやてだったが怖い見たさで頷いてしまう。
はやての様子に満足げに頷き切嗣は語り始める。
「そうだね、食べ物がないことなんて結構あるからね。トカゲとかを食べたこともあるね」
「……うへー」
「後は虫とかも意外と美味しかったかな。まあ、流石の僕もゴキブリだけは遠慮したけどね」
「もうええ、お願いやからそれ以上言わんといて」
自分がゲテモノを食べる姿を想像して思わず口を押えるはやて。
はやて自身そこまで虫が苦手というわけでもないがやはり嫌なものは嫌なのだ。
一方の切嗣はクスクスと楽しそうに笑ってはやての頭を撫でる。
「冗談だよ」
「へ? な、なんや冗談やったんか」
「貴重な食料を無駄にするわけにもいかないからね。ゴキブリもしっかり食べたさ」
そう告げた瞬間にはやては車椅子に乗っているとは思えない速さで切嗣から一気に距離を取る。
取り残された彼が唖然として一歩近寄るとはやてもその分後ろに下がる。
少し走って近づいてみるとはやても高速で逃げ去る。
「ど、どうしたんだい、はやて?」
「ち、近寄らんといて! おとんのことが嫌いなわけやないけどゴキブリ食った人の傍はちょっと……」
「大丈夫だよ、そんなものは何年も前の話―――」
「来んといてー!」
その後、親子間で突発的に始まった鬼ごっこははやての悲鳴を聞きつけた警備員が駆けつけてくるまで続いた。
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