1部分:第一章
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第一章
暗殺
ファネール公爵は国の重鎮である。その権勢は及ぶ者がいないまでだ。
王の片腕として首相の地位にもあり辣腕を振るっている。その手腕には定評がある。それはこの国だけでなく他国からもだ。だがそれは同時にだ。
彼を嫌う者、彼と敵対する者、彼を憎む者が出るということでもあった。政治とはそこで辣腕を振るうだけで何かと敵を作る世界だ。しかもだ。
彼の性格は傲慢であり口が悪くしかも女好きであった。平気で他人の妻や娘に手を出す男でもあった。これでは敵を作って当然だった。
能力はあるが人望はない、宮廷でもその外でもだ。彼には敵しかいないと言ってよかった。その彼を暗殺しようとする者はそれこそごまんといた。
だが聡明でありしかも慎重な彼を暗殺することは難しかった。狙われる様な場所に入ることはなく常に護衛に護られている。彼の食事は常に慎重に毒味が為され屋敷の中はまさに要塞だ。それで暗殺なぞ不可能だった。
しかし彼の敵達はだ。何としても彼を始末したかった。
「俺の女房を手篭めにしやがって」
「娘を弄ばれた」
「俺は財産を奪われた」
「あいつの政策で俺の権益が失われた」
「公爵がいては我が一族は何時か除かれる」
「手柄を取られ国の不始末を押し付けられた」
とにかくだ。人間的にも問題のある彼だった。
「難癖をつけて一族を殺された」
「王家をないがしろにしている」
「あの政策は我が国にとって脅威だ」
「公爵の仕掛けた謀略で我が国は散々な目に逢っている」
国内だけでなく他国からもだ。彼を狙う声が出ていた。まさに敵しかいないのが公爵だった。
だがどうしても暗殺はできなかった。まず刺客は厳重な警護で無理だった。毒殺もだ。
彼は美酒美食を好むがそれには常に毒味をさせていた。食べる時に毒があれば色が変わる不思議な宝石の指輪さえしている。
そうした彼だから毒を使うことも無理だった。しかしだ。
何としても暗殺しなければならない者が多いのも事実だった。その中でだ。
一人がだ。こんなことを仲間達に話した。
「あれを使おう」
「あれ?」
「あれとは?」
「あいつが好きなものを使う」
それをだというのだ。
「それであいつを暗殺する」
「好きなものというと何だ?」
「あいつは酒も御馳走も好きだが」
「そのどれも毒味がされているぞ」
だから無理だとだ。仲間達は言うのだ。その仲間の誰もが公爵に恨みを持っている。つまりその怨念により結託している面々なのだ。
その彼等がだ。彼に問うのだった。
「一体どうするのだ」
「何をするつもりだ」
「どうやって奴を暗殺するのだ」
「公爵を」
「見ていろ。これなら間違いない」
彼は自信に満ちた声で仲
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