幕間 ガンダールヴ
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なに楽しいのかね?」
重要書類である羊皮紙から目を上げずに、ロングビルは応えた。
「お言葉を返すようですが、あなたの健康管理も私の仕事の内なのですわ」
表情をピクリとも動かさず、言い切った。
そこで、いつの間にか彼女の後ろに回っていたオスマンは重々しく瞼を閉じ、
「こうして平和な日々が続くとな、いかに退屈を攻略するかが人生の価値をきめるんじゃよ」
深く刻まれた皺は、彼の生きた年数の証であるが、正確な年齢は、誰も知らない。
百年、いや二百年は生きているのではないかとまことしやかに語られている。
「オールド・オスマン。退屈だからと言って、私のお尻を撫でまわすのはやめてください」
冷静な声でロングビルは非難する。
なお、目は羊皮紙から外さない。
「真実とは、一体どこにあるのだろうか……?考えたことはあるかね、ミス―」
「少なくとも、私のスカートの中にはありませんので、机の下にネズミを潜り込ませるのもやめてください」
またも非難。するとオスマンは、口を半開きにし、ほげーほげーと意味不明な呻きをあげ、部屋の中を徘徊する。
「都合が悪くなるとボケたフリをするのもやめてください」
今度は目を上げ、鋭い目つきでオスマンを睨む。
すると、オスマンは気圧されたように一歩後ろに下がると、足元に来ていた小さなハツカネズミはオスマンの足から肩へと上り、首を傾げた。
それを確認したオスマンは、元の席へと戻る。
「気を許せる友は、今やお前だけじゃ……モートソグニル」
哀愁をにじませた声でネズミ、モートソグニルに話しかける。
そしてポケットからナッツを取り出すと、モートソグニルに与える。
ちゅうちゅうと、嬉しそうになくモートソグニル。
「そうかそうか。もっと欲しいか。よかろう……じゃが、その前に報告じゃ」
ちゅうちゅう。
「おお、そうか。白か。純白とな……じゃが、ミス・ロングビルには黒が似合う。そうは思わんかね?モートソグニル」
「オールド・オスマン」
「なんじゃねミス・ロングビル?」
「今度やったら王室に報告します」
「カーッ!王室が怖くて、魔法学院学院長が務まるかーッ!」
目を剥き怒鳴るその迫力はよぼよぼの老人とは思えなかった。
「下着を覗かれたぐらいで、カッカしなさんな!そんな風だから婚期を逃すのじゃ、は〜生き返るの〜」
そういったオスマンは今度は堂々と尻を撫でまわす。
すると、立ち上がったロングビルは、そのまま上司を足蹴にする。
「痛い。やめて。もうしない。ほんとに」
ここまでは、日常の一コマである。
だが、
――――
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