第三話 決闘と放蕩 その2
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ーは全く意に介さず、卓に置かれたワインの壜を手に取ると、その中身をギーシュに一滴残らずぶちまけた。
そして、今までは嵐の前の静けさだったとばかりに、激しい口調で吐き捨てた。
「うそつき!」
去って行った少女の背を見送り、ギーシュはハンカチを取り出すと、顔を拭い、
「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
などとのたまった。
これにはアーチャーも堪らず、小さく噴出した。
実は彼は、貴族などではなく、コメディアンの類なのではないか、と。
その笑いをかみ殺しながら、その場を後にしようとしたが、
「待ちたまえ」
「何かね?」
ギーシュは、椅子の上で体を回転させると、スサッ!と足を組んだ。
やはり、彼はコメディアンではないのか、吹き出しそうになったが、流石に相手は子供とはいえ、貴族。
笑いを先程よりも強い意志力で噛み殺しながら、応えた。
「君が軽率に、香水の壜を拾い上げてくれたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
流石に我慢の限界だった。
「ふ、ふふ、あっはっはっは?」
「何がおかしい!」
「いやなに、自らの不手際で二股が露見したというのに、こともあろうに落し物の届け主にびしょびしょに濡れた布を被せるとは……これが笑わずにいられるかね?」
アーチャーの皮肉に、ギーシュの周囲にいた友人たちもドッと笑った。
その事に羞恥を感じたのか、ギーシュの頬に朱がさす。
「いいかい?給仕君。僕は君が壜を卓に置いたとき、知らないふりをしたじゃなか。話をあわせるくらいしてくれてもいいじゃないか」
「ああ、そうだな。確かにそうだ。だが、あれしきの事で露見するならば、今日でなくとも、近いうちに白日の下に晒されそうだがね」
アーチャーに言い負かされ、唇をかむギーシュだが、ふと思い出したかのようにニヤリと口端をつり上げ、見下すように言った。
「ああ、君はゼロのルイズが呼び出したって言う、平民を使い魔じゃないか。あのゼロのルイズの使い魔じゃあ、仕方がないな。何でも、ルイズが儀式で何とか体裁を保つために、旅芸人を買い取ったって話じゃないか。ゼロのルイズも、才能がないのに、そんな無駄な努力を重ねて…ああ、君、もう行っていいぞ」
その言い草に、アーチャーは少しばかりカチンと来ていた。
才能がない?
だからどうした。
無駄な努力?
そのない才能を埋めるために、必死に努力をしているというのに。
「すまないね。機転が利かなかったようだ」
「ああ、その通りだよ。納得してもらえたかい?」
「納得し
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