第一話 ゼロの守護者
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―――魔術回路二十七本確認―――
―――動作可能回路二十七本正常―――
―――魔力量正常―――
―――身体に損傷個所なし―――
―――神経、内臓等も損傷個所なし―――
―――身体機能の異常なし―――
そして、気づく。
(受肉している、だと)
己の体が、受肉し、完全なる一個体として成り立っていることを。
世界からの干渉もなく、霊体でもなく、霊長の守護者でもない。
ただ、英雄の力を持った、人間として。
驚愕の事実を突き付けられていたせいか、反応が遅れ、目の前の少女がこちらに飛びかかってくる寸前に、
(投影、開始)
使い慣れた夫婦剣干将・漠耶。その片割れ、干将を投影し、飛びかかって来た少女の首にあてがうように振るった。
振るったのだが、
(何故、そんな目をしている)
目の前の少女の瞳に、こちらへの害意などはなく、代わりにそこにあったのは、
(届かぬ理想を前に、それでも諦めなどしない……まるで)
そう、届かない理想を前に、必死にもがき、苦しみ、決して膝を折らなかった、あの少年に、あの時の自分に、そっくりな目をしていた。
(……凛、すまない。頑張ろうと思ったんだけど、もしかしたら、ここで終わりかもしれない)
少女の首を斬り飛ばすはずだった干将を消し、アーチャーは少女を受け入れた。
何故ならば、
(だけど、この少女を斬ることは、すなわち俺の新たな決意を斬るという事と、同義なんだ)
そして、少女と、自身が、接触した。
唇と唇で。
――――刹那。
「ッ!ぐ、ウグアアアアアア!!」
左手甲に熱が生じ、身体中を這いまわった。そ
そして、自身の固有結界「無限の剣製」が、変質していくのを感じた。
拙い、と咄嗟に少女を突き飛ばし、剣の射程から外した。
だが、意識を保つことが出来たのは、そこまで。
変質した結界の内部から、刀剣が自身をグシャリと穿つ、嫌な音を最後に、アーチャーの意識は暗転した。
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