第一話 ゼロの守護者
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「こ、これが、神聖で、美しくそして強力な……」
呆然と呟くルイズ。
すると、すかさずキュルケが口を挟んだ。
「流石、大見得切っただけはあるわねー。まさか、平民の傭兵なんかを召喚しちゃうなんて」
ぷぷ、と嘲笑を漏らすキュルケ。
だが、その笑みも、一瞬で引っこむことになる。
男が、目を開いた。
瞬間、場が凍り付く。
(な、何なの?この重苦しい空気……?)
男は跳ね上がり、鷹のような鋭い目つきで、周囲を見回し、最後に、ルイズにその視線を合わせた。
男に見詰められたルイズは、まさに鷹にねめつけられた鼠のように身をすくみ上らせ、ガタガタと震え始める。
(な、なによこいつ…!目線が、刃物みたいに!)
ルイズは完全に恐怖に支配されていた。
だが同時に、
(そうよ、私が、コイツを呼び出した。なら、コイツを私の使い魔にしてやる!!)
震える手足に無理矢理力を込め、詠唱を開始する。
「わ、我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
詠唱が終わると同時に、ルイズは駆け出した。
赤い外套を纏い、周囲を警戒すように見回す男の唇へ向けて。
使い魔との契約。それを完遂するには、使い魔との口づけ、つまりはキスが必要なのである。
よって、ルイズは身長差の為か、爪先を精一杯伸ばしても届かないであろう男に飛びかかる。唇を目指して。
そして、飛び上がった瞬間、男の腕が閃き、いつの間にか手にしていた短剣が、ルイズの身体へ迫る。
周囲から短剣の出現により、悲鳴が沸くかと思ったが、
(なんで、みんな何も言わないの……?ううん、違う。何も言わないんじゃない。何も言えないんだ。早すぎて)
そう、これは、死を覚悟したルイズの視界が見せる、スーパースローの世界だったからだ。
しかし、この色が抜け落ち、世界が止まったかのような錯覚に陥る世界において、男の腕と、手に握られた黒い亀甲模様の片手剣の速度だけは、いつもと変わらぬ速度
でルイズへ迫っていた。
(そっか、私、死ぬんだ)
そう覚悟し、目の前まで迫った黒い片手剣を前に、ルイズは今までの自分の人生を省みる。
ゼロのルイズ。出来損ない。不良品。公爵家の面汚し。
誰からも見下げられ、誰にも認められることはなかった。
でも、それでも、ルイズは努力を重ねたいつか、いつの日か、自分が認められる、その日まで。
だが、その望みはついぞ最後まで、叶うことはなかった。
そして、ルイズは瞬きする暇もなく、その生涯を―――閉じることはなかった。
(え?なんで?)
と、思う暇もなく、ルイズは男の唇と
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