暁 〜小説投稿サイト〜
少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第十七話:買物中の予想外
[8/8]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
って、怒りを湛えた顔が無表情まで戻り、遂には無言で俯く。
 気まずい空気が、俺とマリスの間に流れた。

 ……今のは俺が悪い。
 理由はどうあれマリスはこのヌイグルミを気に入ったのだ。
 それに対し、また己の八つ当たりをぶつけるとは……。

 ……否、もしかせずとも―――――今考えてみれば、死神であった彼女は何かに触れる事すら叶わず、低反発素材を触ったのも初めてである事は間違いない。
 生まれて初めて感じる熱、生まれて初めて感じる感触。
 ……それを自我の認識がハッキリしている状態で触れれば―――もしかすると、えも言われぬ快感を得るのかもしれない。

 それらを踏まえれば決して “どうあれ” などと、蔑称できる理由では無いのかもしれない。


「……すまん。今のは俺が悪かった」
「……私も、急に声を出して御免なさい……」
「だが金が無いのは本当だ。今日は諦めてくれ」
「……でも……」


 ああそうだ。
 “今日は” 諦めて貰う。


「また来るぞ。その時……お詫びの印におごる」
「……! ……麟斗、約束」


 差し出された小指を、俺は拒否せず握る。
 指斬りげんまんと言う、今時誰がやるかも分からない方法で約束を交わし、今度こそエスカレーターを使って階下へを降りて行く。


「あ、ちょっとちょっと! 漸く見つけたー!」
「……楓子……忘れてた」
「ガーーーーン! 酷いよマリスたあぁぁん!?」
「……はぁ、バカやっていないで行くぞ」


 やっと我に返ったか、自動ドアのすぐ傍で三度追いついてきた楓子と合流し、俺達はムトゥーヨガー堂を後にするのだった。











「此処に居たのかい? 随分と平和な趣味を持っているものだね……殺戮の天使」

「……!?」
「あいつは……!」


 ―――赤い甲冑を着こんだ、紅髪の騎士と出会わなければ。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ