第十七話:買物中の予想外
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って、怒りを湛えた顔が無表情まで戻り、遂には無言で俯く。
気まずい空気が、俺とマリスの間に流れた。
……今のは俺が悪い。
理由はどうあれマリスはこのヌイグルミを気に入ったのだ。
それに対し、また己の八つ当たりをぶつけるとは……。
……否、もしかせずとも―――――今考えてみれば、死神であった彼女は何かに触れる事すら叶わず、低反発素材を触ったのも初めてである事は間違いない。
生まれて初めて感じる熱、生まれて初めて感じる感触。
……それを自我の認識がハッキリしている状態で触れれば―――もしかすると、えも言われぬ快感を得るのかもしれない。
それらを踏まえれば決して “どうあれ” などと、蔑称できる理由では無いのかもしれない。
「……すまん。今のは俺が悪かった」
「……私も、急に声を出して御免なさい……」
「だが金が無いのは本当だ。今日は諦めてくれ」
「……でも……」
ああそうだ。
“今日は” 諦めて貰う。
「また来るぞ。その時……お詫びの印におごる」
「……! ……麟斗、約束」
差し出された小指を、俺は拒否せず握る。
指斬りげんまんと言う、今時誰がやるかも分からない方法で約束を交わし、今度こそエスカレーターを使って階下へを降りて行く。
「あ、ちょっとちょっと! 漸く見つけたー!」
「……楓子……忘れてた」
「ガーーーーン! 酷いよマリスたあぁぁん!?」
「……はぁ、バカやっていないで行くぞ」
やっと我に返ったか、自動ドアのすぐ傍で三度追いついてきた楓子と合流し、俺達はムトゥーヨガー堂を後にするのだった。
「此処に居たのかい? 随分と平和な趣味を持っているものだね……殺戮の天使」
「……!?」
「あいつは……!」
―――赤い甲冑を着こんだ、紅髪の騎士と出会わなければ。
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