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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第十七話:買物中の予想外
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額は千七百円。

 それを越した商品など買える訳が無い。


「……服は諦められない……でも、これも諦めたくない……如何したらいい?」
「ぬいぐるみを棚に戻せ」
「……諦めたくない」
「もう一度言うぞ……金が無い、だから諦めろ」


 これだけ言ってもまだ未練タラタラなのか、ぬいぐるみを胸元でギュッと抱きしめて放そうとしない。

 再三言うが、金が足りないので買えない物は買えないし、無駄に場所を取るものをそもそも買わせる気など端からない。


「……麟斗、どうにかしてお金を用意して、でないと―――」
「でないと?」


 ファンシーグッズコーナーの担当であろう、キャラクターの絵が描かれたエプロンを付ける店員を指差し、臆面なくマリスは言ってのけた。


「……殺してでも奪い取る」


 ……余りに物騒な台詞だ。
 一件大人しそうなマリスの見た目からは、到底連想できない台詞かもしれない。


「分かった。やってみろ」
「……え?」


 だから俺も、この場からは到底連想できない―――馬鹿な台詞を口にさせてもらった。


「……嘘。殺す気は、無い」
「だろうな」
「……でも、それぐらいに欲しい」
「そうまでする理由が分からん」


 これは対して的外れでも無く、寧ろ的を射た質問だろう。


「……気持ちいいから」


 俺の質問に対しマリスはよりぬいぐるみを変形させて、心なしか気持良さそうな感情を、無に近い表情へ浮かべた。
 売り場を確認して見れば、低反発素材を使用してあると書いており、確かに触り心地や抱き心地は悪くはなかろう。

 だが……俺は呆れた。


「ハ……くだらねえ、そして大した事も無い。阿呆な答えだな」


 ムトゥーヨガー堂への道での珍事、老け顔のバカップル斉藤とコータ、服売り場での一悶着、そしてそもそも俺が行く必要などまったくない場に付き合わされ、喰い過ぎで時間まで潰された事。
 今日に限って碌な出来事が振りかからず、加えて何時も何時も心に残る苛立ちがより増加したからか……呆れ顔では足らず、普段は笑みなど浮かべない顔に、せせら笑いまで浮かべて。


 しかし相手は無表情・無愛想が売りのマリスだ。無表情でぼそぼそ反論するのが関の山、それを受けてから論破すればいい。



「くだらなくなんかないっ!!」
「っ……!?」


 だから……突然叩きつけられた激情に、俺は心底驚いた。

 声を荒げるなど思ってもみなかった。まさか怒りを声にまであらわすなど、予想もしていなかった。
 今の俺は、恐らく間抜けな顔をしているのだろう。


「……あ……ゴメン、なさい……」


 そのマリスですらすぐにハッとな
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