第十七話:買物中の予想外
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たじゃん、何も出来なかったじゃーん」
「……他に何があるのか、分からなかった」
「そんなもの後にしろ」
二人の抗議を受け流して、『舞塔』とテナント名らしきモノが柱に彫られた婦人服売り場を通り過ぎ、十代から二十代の女性用ファッションが陳列されている……グニグニ曲がった碌に読めないアルファベットが彫られている、今日お目当てとしてきたコーナーで足を止める。
「マリス、掌を出せ」
「……こう?」
言った通りに差し出されてきた彼女の手へ、親父から貰った一万円を乗っけた。
「俺は少し外れる……好きなだけ吟味してろ」
「……え?」
「値段やら単位の見方は習ったな? だから一万をオーバーしない様に選べ、と言ってんだ」
俺がこのレディースファッションのコーナーから少し離れるのは、俺の服じゃあないのだから選ぶ理由が無く、どの様な服が似合うかも男の俺では選別が困難な為……そして、奇妙な目で見られないため離れるのだ。
女子同士ならば、死神で今日具現したばかりのマリスは兎も角、友達と何度も来ていて自分で服も選べる楓子なら……デザインがどうなるかが “かなり” 怪しいが、任せる価値が無い訳でもあるまい。
何にせよ、女物しか置いていない此処に、ずっと佇んでいるのも俺自身の居心地が悪い。
珍しく試着室も新しいモノでは無く、それとなく古めなタイプなので、男が居ては他の客が不安だろう。
ずっと不機嫌な顔をされては店側も迷惑だろうし、ならさっさと離れるのが筋であり、何もおかしな所はない。
「駄目だよッ! 兄ちゃんも一緒に選んでくれないと!!」
「……麟斗、貴方にも服を選んで欲しい」
「はぁ……?」
なのに反対された。
「何故に俺が服を選ばなきゃならない……?」
「こういうのって同性だけじゃなくて、異性の意見も参考にした方がいいじゃん? どっちの感性から見ても似合ってるのを選んだ方がいいでしょ!」
「普段着る服なら、本人が気に入ったか、そこそこ似合うで問題無かろうがよ……」
どうせこの話も根本は、“俺の好みを知りたい” が如何だのといった、訳の分からない理論で埋まっているのだろうと、容易に予想できて溜息を吐きそうになる。
―――『マリス』の服を選ぶのに、何故『俺』の好みを聞く必要がある?
……そもそも俺にとってみれば、極端にミスマッチで無ければ至極如何でもいい。
「……麟斗が選ばないなら、私も服は買わない」
「……何で俺が我儘言っているみたいになってんだ……」
お前が買おうが買わなかろうが起こりうる事は単純で、四六時中その黒尽くめの服でいなければらなず、汚れや臭いがキツくなって人に避けられるだけ。
つまり俺自身への害は
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