3部分:第三章
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第三章
「その吸血鬼には用心しても用心し過ぎることはない」
「あの、それで」
「それで?」
「さっき銀の銃弾とかナイフと仰ってましたけれど」
「それに木のクイだね」
「持っておられるんですか?」
話には聞いているがまさかと思いだ。本人に尋ねたのである。
「実際に」
「鞄にいつも入れているよ」
これが返答だった。
「そうしているよ」
「鞄の中にですか」
「そうだよ。家にも置いているそ」
そのだ。自宅にもだというのだ。
「勿論大蒜もね。いつも携帯しているし」
「大蒜も」
「吸血鬼は本当に何時襲い掛かってくるかわからない」
またこんなことを言う彼だった。
「だからね」
「それでなんですね」
「僕は吸血鬼になんかやられない」
血走った目での言葉だった。
「そう、実際にね」
こうだ。大蒜の匂いに満ちた口から話すのだった。そんな話もした。
とにかく彼は吸血鬼を非常に恐れしかもその警戒は日が経つにつれエスカレートしていっていた。人を見れば家族でも親友でも鏡で確めて常に大蒜をかじり十字架を身に着けて聖水を降りかけだ。吸血鬼を怯え続けていた。
そんな彼を見てだ。彼女は不安になって先輩達に話した。
「あの、メージャーさんは」
「最近特に酷いわよね」
「そうよね」
先輩達もこのことを話す。
「神経質どころじゃなくて」
「病的なね」
「そこまでいってるわよね」
「もうね」
「大丈夫なんでしょうか」
不安になってだ。彼女は話すのだった。
「あのままだと」
「ううん、おかしなことにならないといいけれどね」
「そうよね」
そのことがだ。心配になってきた。そしてなのだった。
ある日のことだ。メージャーが出社して来なかった。このことにだ。
銀行ではだ。その彼についてだ。こんなことが話された。
「まさかな」
「いや、あれだけ怖がっていたからな」
「じゃあ本当にやられたか?」
「吸血鬼に殺されたのか?」
「実際に」
こうだ。不穏な顔になってあれこれと話されるのだった。銀行のオフィスでは彼のことで話がもちきりになった。
「無遅刻無欠席の人だからな」
「その人が出て来ないってな」
「やっぱりおかしいよな」
「ああ、本当にな」
「やられたか?」
「吸血鬼に遂に」
誰もがこう思った。メージャーは本当に吸血鬼に襲われたのではないかと思われた。そのことに不思議に思って心配していた。それは彼女も同じだった。
怖がる様な顔でだ。また先輩達に尋ねた。
「あの、本当に」
「そうかもね」
「有り得るかもね」
「だって。イギリスには東欧からの移民もいるし」
そのだ。吸血鬼の本場である。吸血鬼と言えばスラブ、即ち東欧だ。ドラキュラ伯爵のルーマニアはラテン系の国だ
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