四十一話:決闘と日常
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ダールグリュンが所有する土地にてエクスヴェリナとジークは向かい合っていた。
周りには戦いを見届けに来た友人たちともしもの場合に備えてシャマルが待機している。
だがエクスヴェリナはそんなことなど気にも留めずに青い空を見上げていた。
「勝負の前にどないしたん?」
「む、いや……こうして青い空を見る事など生前にはなかったのでな」
少し微笑みを浮かべて答える姿にジークは何とも言えない気分になる。
思えば彼女もまた戦争による被害者になるのかもしれない。
だとしても―――
「ふ、我としたことが死合いの前に感傷に浸ってしまったな。元より我には灰色の空が似合っておる」
―――戦いの場においては関係がない。
どこで手に入れたのか、二本のサーベルを抜き放ち構えるエクスヴェリナ。
それに伴いジークも鉄腕を発動させ構える。
「日に照らされた空の下では光は目立たぬ。覇王も聖王も雷帝も我も灰色の空の下でこそ輝けた存在よ」
戦争時の英雄も平和な世の中では殺人鬼に変わる。
英雄のいない時代は悲惨だが、英雄のいる時代はもっと悲惨だ。
人々が絶望の底に居るからこそ希望を求める。英雄という名の生贄を。
「されど我のすることは変わらぬ、死ぬまで踊り続けるだけよ!」
「踊るんなら…ッ、一人で踊りーや!」
撃鉄は落とされた。先に仕掛けたのはエクスヴェリナだった。
一瞬で姿を消したかと思えば次の瞬間にはジークの後ろに回り込みその首目掛けて剣を振るっていた。
ジークはそれを頭を下げることで間一髪で躱す。
必殺の意思を感じさせる一振りに背筋を冷やす間もなくもう一方の剣が襲い掛かって来る。
今度は体を捻り転がるように距離を取ることで離脱する。
「ふぅ……やはり体がついて来んな。あそこで追撃に行くことができんとは。まあ、よい。それならそれに応じた戦い方をするまでよ」
「今のスピードが限界なん?」
「その通り。魔力で強化しても恥ずかしいことに今ので手一杯よ」
「そっか……なら―――捉えられるわ!」
黒き鉄腕が唸りを上げ襲い掛かる。
まずは避け辛い胴体への左拳の素早い一撃。エクスヴェリナはそれを横に飛ぶことで躱す。
しかし、その程度のことは読めている。
避けると予想していた場所に右の拳を叩きこむ。
移動中に無理やり体の方向を変えることはリヒターの体では負荷が大きすぎるので彼女は仕方なしに右のサーベルを鉄腕に当てることで軌道を逸らす。
だが、それだけでは止まらない。左手に魔力を集中させそれを打ち付けるように叩きこむ。
とっさに左手で防御を試みるエクスヴェリナだが衝撃そのものは消しきれない。
移動中という不安定な体勢ゆえに大きく後ろに体をのけ反らせる。
機
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