閑話―各陣営―
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「あーもう……何故こんなことに」
夜もふけた頃、執務室で頭を抱えている女性が一人居た。
彼女の名は張勲、真名を七乃。
袁家の先代当主袁逢から娘である袁術の教育と補佐、そして反袁紹派の懐柔を命じられていた。とりあえず出世することを目標にしていた張勲はそれを快諾、任をこなそうと思っていたが。その決意は主である袁術の可愛らしさの前に崩壊。
誰よりも袁術の近くで共に在りたいという純粋な願いは、袁術と他者の関係を絶ち、彼女を独占し続けたいと思うほどに歪んでいた。
そして張勲は―――実に有能だった。
彼女が危惧したのは袁紹、袁家現当主にして袁術の実兄である。
文武両道にして寛大、その先見の明は歴代随一とまで言われている。
近況報告を兼ねて観察したが概ね噂通り――いや、それ以上に器の大きな人物に感じられた。
張勲が望んでも手に入らない袁術との血のつながり、それに加え人たらしな雰囲気が鼻に付いた。
もしも、もしもだが、張勲が袁術の補助に付く事無く、あのまま南皮で文官として働いていたらどうなったであろうか。袁紹の人となりや、その器を間近で感じ続けていたら――……今頃は文醜、顔良に次ぐ忠臣として、彼の側に立っていたかも知れない。
もっとも、今となってはそんな気すら起きないが。
閑話休題
そんな張勲の心配は、袁紹が袁術を懐柔――もとい。袁術が袁紹に懐いてしまう事である。
主である袁術は、物心ついた頃から反袁紹派の者達に囲まれて育った。そんな環境で成長すれば性格が歪むことは必須、それを良しとしなかった張勲は、反袁紹派達をなるべく袁術に近づけなかった。
それが功を奏したのか、まだ幼いながらも袁術は純粋な少女に成長した。しかしあまりにも純粋培養しすぎた。
そんな袁術が袁紹と対面したら何を思うだろうか、普段から袁紹を『怖い人』と刷り込んではいるが、この小さな主は勘が鋭い時がある。陽光のような袁紹の存在感を察し。今までの刷り込みが偽りだとばれてしまう。
仮にばれなかったとしても、対面した時に袁紹が掛ける言葉で心を開くだろう。
兄妹の初対面に張勲が口を挟むことなど出来るはずも無い。
故に此処、荊州を袁術の籠とすることにした。
主の実兄、袁紹の先見の明は異常である。幼少期から大陸の疲弊と、それに伴う飢餓や賊の発生を察知し。『棄鉄蒐草の計』なる大計略もやってみせた。
これは張勲にとって喜ばしいことだった。袁紹が袁家当主として有能であればあるほど、反袁紹派を後回しにしてでもやらなければいけない事が多々ある――それを知ったからだ。
ならばあとは簡単、表向きは味方であると見せて、あえて反袁紹派を存続させれば良い。
身内達を気にして袁紹が強攻策にでな
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