暁 〜小説投稿サイト〜
恋姫†袁紹♂伝
閑話―各陣営―
[1/8]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「あーもう……何故こんなことに」

 夜もふけた頃、執務室で頭を抱えている女性が一人居た。
 彼女の名は張勲、真名を七乃。

 袁家の先代当主袁逢から娘である袁術の教育と補佐、そして反袁紹派の懐柔を命じられていた。とりあえず出世することを目標にしていた張勲はそれを快諾、任をこなそうと思っていたが。その決意は主である袁術の可愛らしさの前に崩壊。
 誰よりも袁術の近くで共に在りたいという純粋な願いは、袁術と他者の関係を絶ち、彼女を独占し続けたいと思うほどに歪んでいた。

 そして張勲は―――実に有能だった。
 彼女が危惧したのは袁紹、袁家現当主にして袁術の実兄である。
 文武両道にして寛大、その先見の明は歴代随一とまで言われている。
 近況報告を兼ねて観察したが概ね噂通り――いや、それ以上に器の大きな人物に感じられた。
 張勲が望んでも手に入らない袁術との血のつながり、それに加え人たらしな雰囲気が鼻に付いた。

 もしも、もしもだが、張勲が袁術の補助に付く事無く、あのまま南皮で文官として働いていたらどうなったであろうか。袁紹の人となりや、その器を間近で感じ続けていたら――……今頃は文醜、顔良に次ぐ忠臣として、彼の側に立っていたかも知れない。

 もっとも、今となってはそんな気すら起きないが。

 

 閑話休題



 そんな張勲の心配は、袁紹が袁術を懐柔――もとい。袁術が袁紹に懐いてしまう事である。
 
 主である袁術は、物心ついた頃から反袁紹派の者達に囲まれて育った。そんな環境で成長すれば性格が歪むことは必須、それを良しとしなかった張勲は、反袁紹派達をなるべく袁術に近づけなかった。
 それが功を奏したのか、まだ幼いながらも袁術は純粋な少女に成長した。しかしあまりにも純粋培養しすぎた。
 そんな袁術が袁紹と対面したら何を思うだろうか、普段から袁紹を『怖い人』と刷り込んではいるが、この小さな主は勘が鋭い時がある。陽光のような袁紹の存在感を察し。今までの刷り込みが偽りだとばれてしまう。

 仮にばれなかったとしても、対面した時に袁紹が掛ける言葉で心を開くだろう。
 兄妹の初対面に張勲が口を挟むことなど出来るはずも無い。

 故に此処、荊州を袁術の籠とすることにした。
 主の実兄、袁紹の先見の明は異常である。幼少期から大陸の疲弊と、それに伴う飢餓や賊の発生を察知し。『棄鉄蒐草の計』なる大計略もやってみせた。
 これは張勲にとって喜ばしいことだった。袁紹が袁家当主として有能であればあるほど、反袁紹派を後回しにしてでもやらなければいけない事が多々ある――それを知ったからだ。

 ならばあとは簡単、表向きは味方であると見せて、あえて反袁紹派を存続させれば良い。
 身内達を気にして袁紹が強攻策にでな
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ