第十六話:スーパーマーケットの中で
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女の応援がある手前、簡単には引けないのか実に嫌そうな顔をしながら、コータは再び俺に殴りかかってくる。
どうも空手部というのは本当らしく、慣れないシャドーの所為で片が崩れていただけのようで、正拳突きの制度はそれなりのものだ。
それでも、もう喰らってやる気はないので、考えごとを止め……一発目を軽く弾き、二発目を受け止める。
「あっ……う、受け止めやがっ―――」
そして力を込めて握ってやる。スライムを握りつぶす、一歩手前で留まるのと似た力加減で。
「イデデデデデデデデデデェェェェェェ!? いぃぃぃぃっぃでええええぇぇぇっ!?」
「な、え、ちょ、ココココータ!?」
釣り針に掛かった魚の様に、外れぬ腕から逃れようと必死にもがく。
そんな彼を見た斉藤は笑みを消し、目を思い切り見開いて慌てふためいた。
「放せえっ! 放せよ、放せって!?」
「……」
「放してくださいいいいっ!? 潰れるウウゥゥゥっ!?」
大分焦ってはいる様だが、勿論ながら別に握り潰すつもりなど毛頭ない。
だから俺は押すようにして、コータの拳から手を放した。
「て、てぇぇぇぇ……ついてるよな、ついてるよな冴子ぉぉ……」
「うんついてる! ついてるからダイジョーブだって!」
「くっそがぁ……テメェ! 覚えと」
そこでコータの言葉が不自然に止まった。
……別にかんだり、詰まった訳じゃあ無い。
―――恐らく、俺が目に力を入れているからだ。
恐らくなのは、不確かな為。
イラつきが直に表情へと出ているのか、目つきが悪いと言われる俺に見られたからか、コータと斉藤の顔は真っ青になっていく。
「……はえっ……!?」
「な、何かご用件があるので、しょ、しょうか?」
先の石壁殴りに万力の件もあって、敬語モドキな口調になってしまっているコータの言葉を無視し、俺は斉藤共々見やる。
「一つ言っとく」
「は、はい……!?」
「さっさと失せてくれ、これ以上何かされると―――キレそうだ」
コレは誇張表現だが、ハッタリだと思わせないため、抱いていたイラつきを惜しまず視線に込める。
暴力でも何でも、何を仕出かすか分からないと言う “本気” を感じてくれたのか、斉藤とコータは縮みあがる。
「「ひゃい! 分かりやした!」」
異口同音で噛み噛み発言をし、カチコチに固まったまま二人中よく、ロボット歩きで通路の向こうに消えていった。
「……うっは〜、やっぱ兄ちゃんてパパ似なんだね……こっちまで背筋が凍ったよ……」
「……楓子に同意。まるで鬼の様」
「喧しい」
とは言え目に力も入れていたし、否定できないのが事実。
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