第十六話:スーパーマーケットの中で
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……“此方に” 負担が掛からないのならば、どうぞ身の安全を捨てちゃってくださいと、シカトを決め込むつもりなのだが。
「……あ゛?」
当然というべきか、コータは俺の行動が気に食わなかったようで、顔を歪めて威嚇してくる。
「ナニお前? カノジョの前で格好付けたい系ー? オレ、空手黒帯だけどー?」
言いながらシャドーを始めた。
その構えは……素人目でも、空手では無くボクシングにしか見えない。
専門とする人間には勿論劣るものの、格闘技もそれなりに見てきて実践してきているので……正直ボクシングとしてもなっちゃいない、としか言えないが。
「やっちゃえよコータ! クレ大空手部主将の力見せちゃいなって!」
そしてこの流れで、何故だか戦いを強行する斉藤…………いや、まて。
今クレ大っていったか? つまりこのコータっていう男、俺より歳が上か。
空手部という事が、主将という部分が嘘だろうと本当だろうと、人前で力を見せびらかす―――どころ歳下に振るうか奴が、まさか大学生とはな……。
いや、向こうから見れば同い年ぐらいに見えているのか?
自分より背の高い奴を年下に見るのは余りいないしな……。
「ハハハハ! 覚悟しやがれ!!」
「……」
総合して三十年程生きてきた俺ではあるが……キレやすいとかそう言った性格上の問題は親の庇護下に入る毎日の中で以前より寧ろ前に出ていると、子供っぽい部分が出ていると最近感じている。
故に、今かなり苛立っている。
精神年齢で上だと言える部分も、精々奴よりは“余裕がある”という部分だけだ。
勿論、親父の前なら面倒くさい事を回避する為に表情筋を抑えるが……今こう言った場でそんな事を考えるのは野暮という物だろう。
「死ねッ!」
呑気に考えていたからか防御も出来ず、コータの拳が俺の腹に命中した。
斉藤は嬉しそうに声を上げ、コータはニヤリと嗤う―――
「か、かってぇぇ……!?」
―――事は無く、引きつった笑い顔で拳を震わせていた。
どうも俺の腹筋より、コータの拳の方が軟だったらしい。
極端な事で例えるなら、今の状況は人間がトラックに殴りかかった様な物……つまり、ダメージを負うのは殴りかかった方。
まあ俺自身、そこまで硬いとは思っていないが、今この場に限ってはその例えも、案外間違いにはならなそうだ。
……だが、(親父の事もあり)鍛え上げていないとは言わないが、かといって本職よりはやはり劣る筈の俺の筋肉が、ソコまで硬い物なのだろうか……?
「行け行けコータ! もっとヤッちゃえよそんなキモオタ!」
「お、おう! やってやるよぉ!」
彼
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ