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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第十六話:スーパーマーケットの中で
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口にする。
 空気を読んだのか、マリスの髪の毛は既に魔力は通されておらず、普通に右掌が使えた。

 俺の発言から一瞬、水を打ったような静寂が走った。


「ギャハハハハハッ! アンタ彼氏とじゃ無くアニキとデートって何系ー!? ヘンタイ系ー!? ギャハハハハハッ!!」
「オエッ、この女キモッ、やっぱ滅茶キモッ。アニキと腕組んでるって……オエッ」


 嘘のように『嗤い』声が響く。

 ……お前ら知っているか? 例え正しい事だとしても、言い方を間違えるとただ単にムカつくだけだって事を。
 殺したくなるほどに。

 あとコータ、お前そんなに吐きそうなら今すぐトイレ行け。
 会話も終わるし、各々の行動に戻れて良い事づくめだ。


「……殺す?」
「黙ってろ。お前だと洒落にならない」
「……了解」


 いい加減話す理由も―――というか元々話をする必要もないのだし、無視して踵を返そうとする。
 のだが……しかし視線で牽制しあっていて、相手の斉藤も此方の楓子も、容易に動かせてはくれない。

 動き一つで、余計な会話に繋がりそうだ。


「つーかさー、吉岡ー。そっちにもオタクくせえブス居るけど、誰よー?」


 言いながらマリスを指差した斉藤の言い分に、楓子は顔を歪めて本気で怒っているのか、先のは別の理由で震えている。


「……いい加減にしないと、本気で怒るよ、斉藤……?」


 まるで家出の性格が猫かぶりな如く、極端なまでの敵意をむき出しにしている。
 気持ちは分からんでも無い……というかよく分かる。


「うっせーよブス吉岡。何ーアンタ、実のアニキとデートとか言っといて、そこのブスにフタマタかけられてんのー? やッすい女、オエッ」
「そうかー? そっちの子だって結構カワイイ系じゃねー? ねー、君ー」


 だから斉藤、そこまで吐きそうならトイレ行け。

 そしてコータ、アンタは一々物色しないと気が済まないのか?
 彼女いるのに?


「……」


 声を掛けられたマリスは、しかし黙っていろという俺の言葉をちゃんと聞きいれ、コータの発言を無視している。
 だが、どうもそれが気に食わなかったらしい。


「お? ナニこのオレを無視してくれちゃってんの?」


 一歩踏み出してコータは乱暴にマリスへ掴みかかった。


「……チッ」


 その手に対し、俺は自由になった左腕を動かして、横からガッチリと止める。
 声をかける気もなかったので、俺もずっと無言のままだ。

 一応の弁解として、コレはマリスを庇ったと言うよりは、コータを庇ったと見て貰いたい。
 気に食わないが、最悪病院送りになって、“此方に” 負担が掛かるよりはマシだ。

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