第十六話:スーパーマーケットの中で
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
出て来る理由は、マリスの設定である「みたもの全てを殺戮せねば気が済まない」という物からきているらしい。
だがその設定だってそもそも可笑しい。
見たもの全てというなら、俺も楓子も親父もお袋も、ここにいる無関係の人間もペットや植物でさえも、鎌に能力にを盛大に振るって血液をぶちまける事態に持ち込むのが、物騒だが正解だという物。
……されど、マリスは不合理な理由で殺す事はしないといい、性格も良いと書かれていたメープルは―――まあウチの馬鹿が、《ぶっちゃけアタシそっくり》とか書いた所為で意味が反転したのかもしれないが―――楓子をさらおうとし親父に危害を加えかけ、しかも雰囲気は邪なモノだったと来た。
この事から、内面的な設定に限っては、幽霊や死神という前身から変わらず、捻じ曲げられもしない本来の性格が出ているのだと、俺は推測したのだ。
確信に至っている訳ではないが、大方当たりだろう。
「……いい加減腕をどけて。でないと殺す」
青く鈍い光が過った……瞬間【鋼糸鏖陣】と化した長髪がうねり、俺の首に巻きついて来ようとする。
まず首近くに右腕を差しこみ、親指を引っ掛け腕を持ち上げる。
ペット用リードの如く手の巻き付いたそれを、聞き分けのない我儘犬を窘めるが如く、振り落としながら脇を閉めて若干引く。
「……何故そこまで拒むの……?」
「暑いからだ。お前だって体温が上がってんだろうが。これ以上上げてどうする?」
「……体温上昇よりも、麟斗と楓子の身の安全が最優先」
「ならアイツに抱きつけ。逃げるだけなら俺でも出来る」
言いながら珍しく大人しかった楓子を見ると、何やら小刻みに震えていやがる。まず間違いなく寒いとか、俺らのやり取りがツボに入った訳ではなかろう。
つまり……嫌な予感しかしねえ。
今日に限っては的中率百%であるその予感に従い、少し体勢を変えて右肘を突っ張れば……ハイ、楓子のデコに見事命中。
即ち嫌な予感的中。
「むぐぅ〜……! ズルイズルイ! ヒイキーッ! アタシがやろうとしたらすぐ暴力に走るクセにぃっ!」
「ほざけ」
だってお前、抱きついてくる状況が断固の断な場面だったり、抱きついてくると言うよりタックルに近かったり……いや、そもそもの前に気を許したら何されるか分からんし。
それに、それの事とこの状況と、何の関係がありやがる?
「一々マリスに張り合って無駄行動ばかりするな……」
「兄ちゃんが乙女心の分からない子供なのが悪いんだもん!」
確かに乙女心は分からないし、お前に限ってなら分かりたくもない。
……けど何度拒絶しても、ぶっ叩いても治らないのは即ち、お前だって “男心” を理
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ