第二百二十六話 徳川家の異変その十二
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「そこで姿を表す、そこでじゃ」
「一気にですな」
「討つ、そうする」
「大きな仕込みですな」
「ここまで大きな仕込みははじめてじゃ」
信長にしてもというのだ。
「しかしじゃ」
「そこまで大きな仕込みをせねば」
「ならん」
今はというのだ。
「そうした状況だからな」
「天下の為にですか」
「この天下には昔からおるのではないのか」
疑念もだ、信長は見せて語った。
「裏には」
「よからぬ者達が」
「そんな気がするのじゃ、それこそ神武帝開闢の頃からな」
「そこまで昔からですか」
「おる様な気がするのじゃ」
まさにというのだ。
「どうもな」
「近頃殿はそう仰いますな」
「前からうっすらとじゃったが近頃はじゃ」
「確かにですか」
「そんな気がしてきたのじゃ」
疑惑がだ、次第にというのだ。
「だからな」
「大掛かりな仕掛けをですな」
「何段もな」
「御主は摂津の者じゃ」
このこともだ、ここでは重要だった。
「尾張や美濃の者ではない」
「家臣であってもですな」
「そこも見られる」
信長は資質のある者は誰でも重く用いる、しかしどうしても譜代外様のことはあり荒木は外様になるというのだ。
「我等がどう思っていてもな」
「その者達はですな」
「御主がことを起こせばな」
「その時にですな」
「御主に寄る」
まさにこぞってというのだ。
「その前に色々と仕込むぞ」
「さすれば」
「そのことも話そうぞ」
こうしてだった、荒木は信長の話を受けてだった。そのうえで動くこととなった。そうした動きはまだ知られてはいなかったがだ。
この信長と荒木の話からだった、織田家の中にも不穏な空気が流れだした。しかしその出処は誰も知らなかった。
第二百二十六話 完
2015・5・4
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