第二百二十六話 徳川家の異変その十一
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荒木はまず茶室の中を見回してだ、信長に言った。
「利休殿もですか」
「あえてな」
「人払いをされて」
「ここに入った」
この茶室にというのだ。
「ここは城の中で最も地味な場所にある」
「人気のない」
「あえてここに入りじゃ」
「それがしに話をして下さるとなると」
「わかるな」
「はい、それだけですな」
「大事な話じゃ、乗るかと言ったが」
先程話したことをだ、信長は話す。外は静かだ。だが既に人払いをしてだ、周りは忍の者達に固めさせて誰も入らない様にしている。
「その話じゃが」
「謀反ですか」
「わかったか」
「ここまで大事な話なら」
「そうじゃ、御主謀反の素振りを見せよ」
「さすればですな」
「動く者が出て来る」
信長は荒木に鋭い顔で言った。
「必ずな」
「それは天下の表にはおらず」
「裏におる者達じゃ、絶対に出て来る」
「さすればそれがしが釣るのですな」
「謀反の振りをしてな」
そのうえでというのだ。
「動くのじゃ、さすれば御主の周りにじゃ」
「怪しい者達が出ますか」
「その者達を見極めよ」
是非にというのだ。
「よいな」
「はい、畏まりました」
「周到な芝居をせよ、よいな」
「周到に、しかも」
ここでだ、荒木は信長に確かな笑みで応えた。
「派手にですな」
「うんとな、こうしたことは派手な方がばれぬ」
「小さな芝居はばれますが」
「大きな芝居ならばれぬな」
「世はそういうものですな」
「だからじゃ。よいな」
「派手な芝居を天下に見せましょう」
荒木はこのことを約束した、そしてだった。
信長にだ、自らこう申し出た。
「上様、では」
「これよりじゃな」
「暫し上様にお茶を淹れさせて頂くことが出来なくなるので」
「それでじゃな」
「今から淹れて宜しいでしょうか」
「頼む」
これが信長の返事だった。
「ではな」
「さすれば」
「あと御主出家でもしてから家族全てと離縁せよ」
「その振りをせよと」
「離縁となればわしも芝居とはいえな」
荒木と仕組んでだ、それでもというのだ。
「御主の家族や縁者、即ちな」
「人質になる者達を、ですな」
「手にかけずに済む」
謀反を起こせば人質を殺す、その為のものであるから当然だ。しかし離縁をしていればそれでというのだ。
「まあ縁者は全て無理にもな」
「寺に入れて」
「ことなきになる様にせよ、よいな」
「そのことも畏まりました」
「ここで御主が仕組みそしてじゃ」
信長はさらに言うのだった。
「もう一つわしが仕掛ける、さすればな」
「その者達はですな」
「焦り動きじゃ」
「遂にですな」
「大きな手を打つ、大きな手ならな」
さすればというのだ。
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