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戦国異伝
第二百二十六話 徳川家の異変その七

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「怪しい噂が広まっていると」
「よくしてくれた、これでよい」
「そうでしたか」
「やはり吉法師殿に伝わっておるか、ではな」
「徳川家は、ですか」
「おかしなことにはならぬ、それにな」 
 さらにというのだ。
「吉法師殿が知恵を授けて下さる」
「そうして頂けますか、父上が」
「必ずな。この様な噂があってはたまらぬ」
 それは到底というのだ。
「この度のことは相手の影も形もない故に参った」
「ですが父上」
 当の信康もだ、怪訝な顔で家康に言った。
「この度のことは」
「必ず言っておる者がおるな」
「最初に言った者はです」
「そうじゃ、誰かが言わねばな」
「噂は出ませぬな」
「到底な」
「左様です、ですから」
「誰が広めたか気になるのう」
 家康も言う。
「やはり」
「その者を探しますか」
「出来ればな、どういった者か気になる」
「さすれば」
「まあそれは今はじめるが」
 しかしというのだった、家康は。
「見付かるとはな」
「思えませぬか」
「そんな気がする」
 家康は直感的にそう思っていた。
「とてもな」
「ですか」
「しかしそれでもじゃ」
「相手を探し出して」
「それも噂を消すことになる」
「相手を捕らえられずとも」
「その者が領地から去るか隠れるからな」 
 噂を広めるよりもというのだ。
「そちらに専念するからな」
「だからですか」
「ここはそうしよう」
 噂の出処を探しもするというのだ、そうした話もしてだった。
 家康は酒井を安土の信長のところに送った、そこで酒井は信長にその噂の全てと実際を信長に話した。その話を聞いてだ。
 信長は酒井にだ、まずはこう言ったのだった。
「そうか、徳川家でじゃな」
「妙な噂が広まっております」
「仕掛けてくると思っておったが」
「仕掛けるとは」
「いや、そのことはおいおい話す」
 今はというのだ。
「しかしな、徳川家でか」
「妙な噂が出ていますな」
「確かにのう。どれもな」
 信長は酒井から受け取った書を読んだ、そこに徳川家の中を流れる噂が全て書かれていたがそのどれもがだった。
「荒唐無稽なものばかりじゃ」
「上様もそう思われますな」
「築山殿が密通か」
 信長はまずこのことを笑い飛ばした。
「そんなことは有り得ぬ」
「はい、築山様はあくまで殿だけです」
「竹千代に一途じゃからな」
「その様なことはされませぬ」
「そもそも明からの医師とな」
 信長なその相手のことにも言及した。
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