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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十六話 内地にて
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合切何もかもが決着がつく。陛下も止めたいのだ、理由が必要なのだ」
 親王が真剣な顔で答えた。
「大隊長ですか。殿下、どちらの事をおっしゃっているのですか?」
 黙って上層部の話に耳を傾けていた大辺が口を開いた。
――馬堂豊久と新城直衛 どちらも全く違った意味で爆弾と成りえる存在である。
「早ければ早い程良い。私は育預殿を推薦します。
彼に独断で奏上させ、駒城は無関係で通し、奏上の後は近衛衆兵に編入させる。
どの道、御育預殿は無位の者です。殿下を後ろ盾にすれば衆兵隊の方が良いでしょう。」
 豊守が淡々と提案した。
「馬鹿を言うな!大隊を指揮していたのは馬堂少佐だ!
ならば彼が帰国するまで待たせれば良い!直衛を政治の道具にするのか!」
保胤が声を荒げると、豊守の目つきが鋭くなった。
 ――不味いな。二人とも頭に血が上っている。御二人共身内には情が厚いからな。
 大辺は仲裁を行うべく理論を組み立てる。
「若殿様、育預殿は譜代家臣の中でも嫌われています。
武勲を上げた以上今までの曖昧な状態では居られません。
ならばいっそのこと近衛に編入して衆民の側につかせた方が幾らか増しです。
豊久様は由緒正しい駒城の陪臣――将家です。
彼を矢面に立たせたら奏上の意味は完全に駒城が守原を告発する形になり、駒城が完全に孤立します。
いえ、駒城の内部でも割れるかもしれません――馬堂を切り捨てるおつもりなら話は別ですが」
 この場にいる誰もが能吏としての側面を持っている。だからこそ、同じ文面がそれぞれの脳裏に浮かんだ。)
――育預の立場のままでは曖昧だ。ならば衆民の軍に編入する。
独断で守原を告発し、近衛衆軍に飛ばされる。実仁親王がそれを取り成す。
白々しいが形にはなる。この場合は形に成る事が肝要だ。

「保胤、俺も同感だ。馬堂の嫡男では、将家でありすぎる。
この件を将家の争いで完結させるわけにはいかん。」
 親王が駒城へと向き直り、告げる。
「殿下!」
 保胤様が目を剥く。

 窪岡少将はそれを静観している。彼は駒城派ではあるが権門に縋っているわけでは無い。
それだけで軍監本部首席戦務参謀にはなれない。

「保胤、俺も新城少佐の事を考えてないわけではないぞ――。」
 実仁少将が駒城中将の説得を始めた時、微かに扉を閉める音がした。
「大辺」
 窪岡少将に目配せをし、大辺は障子を静かに開き廊下へと忍び出る。

 実仁親王の御付武官と家主が話している
「失礼、如何しました?」
御付武官は、大辺に向き直ると何者かがうろついている。と云った
 ――護衛の専門家が言うのだ、間違いではないだろう。
内心、舌打ちをした。ここで皇族と弓月が動いているのが反攻派に漏れるのは非常にまずい。
「私が見て参ります」
地味
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