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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十六話 内地にて
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を報告する。
「軍監本部は参謀の半数以上が反対しています。
水軍は少なくとも統帥部と皇海艦隊は反対しているようです。」
 保胤が話を継ぐ。
「統帥部は反対派が大多数を占めているそうです。
統帥部戦務課甲種の者と話す機会がありまして。」
「あぁ水軍の名誉少佐にされたのだったな。貴様の義弟は。」
 豊守が身動ぎする。
「部隊が捕虜になったことは確認できたのだろう?
来週には正式に捕虜の確認が出るのだから。」
 慌てて宥める様に保胤様が言う。
「えぇ。育預殿のお陰で。息子からの文も届けてもらいました。」
 豊守が珍しく、ぎこちない笑みを浮かべている。
 見かねた実仁親王が軽く咳払いをし、話し出した。
「近衛では禁士は賛成している。衆兵は黙っている。つまり反対だ。」

「禁士は将家の軍です、此方は予想していましたが、
衆兵はもう少し戦意が高まっていると思いましたが?」
 弓月が尋ねた。軍人ではなく、皇族としての立場で見れば、諸将時代も実権なき皇宮に身を置き続けら彼の一族こそが、この中では一番皇族に近しいのかもしれない。
「そうでもない、美名津での交渉はむしろ皇族としての俺の手柄に近い。
皇家のなけなしの権威を活用しただけだからな。肝心の後衛戦闘は名ばかりだ。
実際に戦ったのは豊守、貴様の息子と保胤の義弟、新城直衛だ」
実仁が不機嫌そうに嘆息する。
「兵達も将校達もそれを知悉している。総反攻の反対勢力には当てにするな。」
丁重に首肯すると、弓月は言葉を促す。
「それで、殿下は?」

「勿論、反対だ。守勢に回るのならば兎も角、奪還なぞ不可能だ。」
 豊守が口を開く。
「衆民院は割れています。
今回の大敗自体も問題ですが、これからの戦の長期化を問題視しています。
敗戦はもちろんですが、なによりも経済の圧迫を恐れています。
継戦だけでも莫大な負担になりますし、当然ながら、アスローンとの貿易線も封鎖されます。」
 皆が苦い顔で頷く。弓月も咳払いをし、口を開いた。
「それにつきましては執政府も同様です。
外務省はアスローン諸王国。そしてアスローンを通して、南冥――正式には凱帝国ですな、それらの国々とも交渉の可能性を探っております。
経済の疲弊が開戦の理由なのですから更に余裕を奪い、〈帝国〉の力を削げば和解の目があると」

「〈帝国〉に二つ戦線を持たせると?――成程、経済の崩壊が見えてくれば交渉の余地もある」
 保胤が反応した。
「はい、ですが反応が鈍い様ですね。無理もありません、元々両国共に十年に一度は攻め込まれています。疲弊しているのは互い様なのでしょう」
 弓月の長男は末端ではあるが外務省に勤務している。
「戦端を開くには意志の統一が必要か」
 実仁親王が国家の頂点を見てきた一族の表情にな
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