四十話:覚悟と日常
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なお、ミカヤの寝取り発言は教育上不味いのでヴィクターがヴィヴィオの耳を塞いでいる。
「でも、相手は殺し合いを申し込んできたのよ。それは分かっているの、ジークちゃん?」
「……怖いけどそうせんとリヒターが帰ってこんのなら私は戦います」
「そうじゃないのよ。勿論ジークちゃんが死ぬのもダメだけど―――あなたがリヒター君を傷つけちゃうかもしれないのよ?」
「……え?」
シャマルから改めて覚悟を問われ、死ぬ覚悟はあると答えるジークだったが、自分がリヒターを傷つける可能性を気づかされ顔を青ざめさせる。
それは当然だろう。自分が傷つく覚悟を決めるより自分の大切なものを傷つける覚悟を決める方が重いのだから。
助けたいと思うその人を傷つける。この戦いが意味するものはそれなのだ。
「そ、それは……非殺傷設定があるからだいじょぶやと……」
「そうね。確かに非殺傷設定があるから死にはしないでしょうね。でも、相手はあの様子だと殺しに来るわ。その時にあなたは自制心を保って傷つけずに戦える?」
「…………」
ジークはその問いかけに答えられない。彼女は優し過ぎる。
試合で相手に怪我をさせただけで心を痛める。それは美点であり弱点でもある。
それにもかかわらず命の危険を感じ取ればエレミアの神髄が発動し容赦なく相手を屠る。
相手を救うために戦う上ではこれ程不利な能力もない。
これは勝てばそこで終わりという戦いではないのだ。
「相手も、自分の心も傷つけてでも戦う覚悟はある?」
「……正直恐いです。でもッ! 私は伝えんといけんことがあるから! なんでもええから一緒におりたいから! ……戦うんや…ッ」
ジークの静かに、しかし叫ぶ様に告げられた言葉をシャマルは無言で聞き届ける。
他の者達も彼女の覚悟を感じ取り静かに見つめる。
「……分かったわ、頑張って頂戴。私たちは何か参考になる情報がないか探してみるわ」
「どうだい、ジーク。模擬戦の相手なら今からでもOKだよ」
「それならわたくしは決闘に相応しい場を整えませんと。それと、ジーク今日は家に泊まっていきなさい」
「私もお手伝いできることがあったら何でも言ってください」
各々がジークの力になれないかと動き始める。
その姿にジークは改めて自分の周りには自分を助けてくれる人が居るのだと再認識する。
同時にいつもなら一番近くで茶々を入れてくる彼の姿がないことに胸を痛め決意を強める。
「一発キツイの入れて目を醒まさしたるからな―――リヒター」
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