第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
20話 新たな一歩
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生木の芳醇な香りの立ち込める仮の拠点、いつの間にか《レアアイテム詐欺MPK対策本部》となった室内で、俺は愛用の湯呑に視線を落としていた。幾つもの思考が生まれては、それを否定し、糸口を捉えようとも思うような最適解は生まれず。ただ難航する自問自答に辟易しながら、眼前の茶を飲みほした。
「………まぁ、アレだ。この際あるがままを話しても良いんじゃないカ?」
「いや、それじゃ意味がないだろ………少なくとも根本的な解決にはならない」
ただ成り行きに振り回されたというか、流されたというか、少なくとも俺はアルゴの汚名を雪ぐために行動した。それだけは言える。そして、結果論ではあるが悪い方向に流れることは無かった。
しかし、誤った選択をすれば事態の根治はおろか、同じことを繰り返されるような事態になることも予想される。それだけは絶対に避けたいのだ。
「それに、本当の意味で犠牲者を減らすというなら、むしろこれからが正念場だろう?」
「………そう、ダナ。申し訳ないけど、今回は頼らせてもらうヨ」
天井を仰ぐように揺り椅子の背凭れにかかるアルゴを見遣るのも束の間、ドアが叩かれるくぐもった音が室内に響き、来客を報せる。こちらから呼んだ相手だけに待たせるわけにもいかない。早々に廊下を抜け、迎え入れる。
「悪いな、いきなり呼び出して」
通り側で待っていたのは、レイとニオ。そして以前の訪問時には不在だったリゼルの三名だった。
対人スキルの乏しさ故、我ながら気の利かない迎え文句となったが、正直ここまで来てくれない可能性すらあったのだ。この際、自らの不躾を顧みるよりは、足を運んでくれた彼女達に感謝するべきか。
「ううん、ボク達も近くのアイテム屋さんに行く途中だったから」
こちらに配慮して気を利かせてくれるレイの表情は、やはりどこか暗い。
精神的な疲弊を思わせるものの、それでも笑顔を作って気丈に振舞っているのは彼女の強さなのかもしれない。しかし、それは同時に空しいまでに報われない空元気であるとも、俺には映った。
未だ彼女達はピニオラから得たレアアイテムの情報の真偽を知らず、未だそれに縋っている。それ故に、彼女達は俺達に何事もないように振舞う。何処の誰とも知れない相手に、自分達の追い求める虚像の存在を知られないために。その背景を知ってしまった立場からすれば、彼女達は酷く痛々しい。
「少し話したい。中に入ってくれ」
促されるままにリビングまで進む彼女達の前を歩き、とりあえず適当に寛いでもらうよう声を掛けて茶の用意をする。アルゴに僅かな殺気を滲ませたリゼルには肝を冷やされたものの、突っかかる様子はなかった。しかし、剣呑な雰囲気が辺りに立ち込めた。その刺々しい空気を肌で感じつつ、
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