第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
20話 新たな一歩
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部屋の中の面子も、ドアが開いたことでリビングに意識が向けられたことで女性プレイヤーも、かつてのPTメンバーを認識する。室内から歩み出てきた《彼女達のリーダーと呼ばれていた》赤髪の少女――――《クーネ》目掛けて一番大人びた容姿のリゼルが飛びつき、ニオも同様にクーネに飛び込む姿を見ながら、クーネと出会った時のことを再び思い起こす。
ティルネルのアバターがあわや消失するかと思われた瞬間、《手鏡》は紛う事なき奇跡を起こしたのだ。ティルネルの中にあったプレイヤーの存在、それが如何なるものであったかは測りかねるが、チュートリアルで配布された悪夢の代名詞は《プレイヤーのアバターを現実の姿と同様のデザインに設定する》という効果を遺憾なく発揮し、プレイヤー《クーネ》は再びSAOに帰還したのである。懸念していたティルネルの消去もなく、アバターの分離という結末で、奇跡は幕を下ろしたのである。端から一部始終を見ていた俺からすれば、ポリゴン片に包まれたティルネルからクーネが分裂するように出てきた時は腰を抜かしかけたものだ。その後の会話でレイ達の関係者と知った時には世間の狭さも思い知らされたが。
とりあえず、紆余曲折を経て再開を果たした彼女達に水を差すのも憚られる。それより、リーダー不在であった間にリゼルとニオを纏め上げていたレイに話すことがある。どういうわけか、他の2人と同じようにクーネに飛び掛かるような真似はせず、俺の隣で抱き合う3人を遠目から眺めているにとどまっている。
「………驚いた。お前が一番先に飛び込みそうだと思っていたんだけどな」
「ボクはあとでいっぱい愛でるからね………それと、ありがとう。リーダーを助けてくれて………」
「宝珠はギルドに復活の特典を付与するものではない。使えば一回で消える消耗品だ。そんな貴重品を使って助けた命だからな。これからはリスクの高いレアアイテムなんぞの為に棒に振るなよ」
「………うん」
これで、彼女達はピニオラの嘘から解放されただろう。それによる無理な狩りを断行することも、きっと無くなる。しかし、望みを叶えてしまったが故に行動力を失ってしまうことが、俺にとっては最も忌避したい事態とも言える。偶然が重なったとはいえ、彼女達を救済したことで新たな可能性を見出したのだから。
「それと、これは既にクーネにも話したことだけれど、出来ればこのままボス攻略を目指してもらいたい」
「………え、ぼ……ボス!? 無理だよ!?」
狼狽して拒絶するレイの言わんとする事は決して分からなくもない。
大切な仲間を失ったからこそ、レイは無用なリスクを冒す事を恐れるようになったのだ。ましてや俺の頼みは、言わば死地に赴けというようなもの。傷は治りかけがデリケートであるように、彼女達のメンタルも死に関するワード
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