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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
20話 新たな一歩
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ついこの間と同じように三人並んでソファに座るレイ達に菓子を添えて茶を差し出し、対話の場面は整ったものとする。


「これから、また森に行くのか?」
「え、ぅ、うん………宿代も稼ぎたいし、レべ上げもしときたいしね」
「仲間が死んでるのに怖くないのか?」
「………でも、行かなきゃいけないから………」


 アルゴは無言。レイ達の心を抉るような真似をしているのは自身でもはっきりと解る。レイの返答もより重苦しく、リゼルからは鋭い視線を向けられている。俺は今、間違いなく彼女達の敵を演じているのだなと、この上なく思い知らされる。
 その上で、自分に課せられた悪名を方便に用いるのだから、恐らくはこれから先は蛇蝎の如く嫌われるのだろうと心のどこかで腹を括り、レイを見据える。


「………正直、やめといた方がいいぞ」
「大丈夫だって。これでもボク達、強いんだから。それに―――」
「探しても無駄だって言ってんだよ」


 レイの言葉を遮って、言い放つ。
 話を途中で遮られて表情が固まったレイに、その横の二人にも向けて話を続ける。


「お前達が探してる蘇生用アイテム………正式名称《反魂の宝珠》は超がいくつも付くレアアイテムだ。出る確率も低ければ、ゲーム上たった一つしか存在しない。ましてや《召集》スキル持ちのエルフなんて今のSAOじゃまともにやり合うような相手じゃないだろ」
「………何でだよ………何でお前がその事を知ってるんだよ!?他のプレイヤーは誰も知らないって、アイツはそう言ってたんだぞ!?」


 嘘が齎したのは、焦りか、恐怖か、リゼルの心情を細かく読み解く手段は俺にはない。しかし、その激情が彼女を突き動かしたらしく、ソファを立ち上がって俺の胸倉を掴み、怒声をぶちまける。それが俺には悲鳴のようにも聞こえたが、俺が感傷に浸っては話も進まなくなる。
 この期に及んで目的がレアアイテムでないとなれば完全に躓いてしまっていたが、こう分かりやすく態度で示してくれたのは、奇しくも僥倖といったところか。この嘘を成立させることこそが、彼女達を立ち直らせる手段の一工程なのだから。


「知ってる。俺はベータテスターだからな」
「ッ!?」


 リゼルは驚愕で目を見開く。ベータテスターという人種が、このSAOにおいて如何なる立場にあるかは、彼女達のような新規プレイヤーは多少の例外こそあれど、皆一様に一定の認識を持っている筈だ。チュートリアルの直後、自分達を見捨て、その知識を以てリソースを貪った悪。だからこそ、敢えて悪になることを選んだ。誰しも共有する認識こそが、時に絵空事にも覆し難いリアリティを与えるものだ。


「HPが全損すればリアルでも死ぬ。蘇生アイテムの情報を予め知っていれば、それを狙わない道理はないだろう?」

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