月下に咲く薔薇 12.
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はないか、ロックオン」それを押し時と読んだのか、クランが語気も強く力説する。「我々4人が暇を持て余しているうちは、まだまだZEXISの総力ではないぞ!」
「ま、俺達に乗るかどうかを決めるのはティファだろうけどな」一応の抵抗を示した後、前髪をかき上げたロックオンがミシェルに手を差し伸べ立つ手伝いをする。「仕方ない。やるか」
3人で部屋を出、さてティファは今何処にいるものかと考える。
「ロアビィとかロジャーとか、ZEUTHのメンバーに訊かないとわからないのだな」
昨夜の部屋割りの全てを頭に入れている者は、極僅かだ。しかも、そのような人物こそ、クランやクロウの室外活動には決していい顔をしないだろう。
「うーっ、ミシェル」クランが護衛の少年を見上げれば、「何だ、もう壁に衝突か」と少々惨い返事が返って来る。
「ティ…、ティファのいる所にはガロードがいる。ガロードを捜せば良いのだ」
「どうやって」
「むー…」
掛け合い漫才のような2人の会話に、クロウは助け船を出す事にした。
「案外、シモンのところにいるかもな。最近ティファちゃんは、ブータとよく話をしているそうだ」
「ブータとは、あの小さな生き物か!」クランが、ぽんと手を叩いた。「シモンの居所ならば知っているぞ。ニアと一緒に食堂だ!」
さっそく走り出そうとするも、ちらりとミシェルを顧み、ぐっと堪えてゆっくりと歩く。そんな彼女も、見る者にある種の動物を連想させた。
女性に対し、少なからず失礼な発想かもしれないが。
クランのツインテールが揺れている。右に、左に。
ところが、そのお下げ髪の先が天井を指し、一回転した。
クランが跳ねたのかと思ったが、揺れているのは何もクランの髪ばかりではない。
ロックオン、ミシェル、そして天井が震えていた。
不意に、足下の感触を失い、全身を襲う落下感に仰天する。
「おかしいのは俺か!?」
手足を目一杯に伸ばそうとも、壁や床といった固いものに触れる事ができなかった。食事を抜きすぎて目を回した事もあるが、その際に起きる感覚の異常とは明らかに異なっている。
生身で落下を体験するなど、決して楽しいものではなかった。どこまで落ちるのだろうと考え、それが底なるものの存在を前提にしていると気づく。
クロウはふと、小銭が落下するイメージを自分の中で膨らませてみた。1G硬貨が引力に引かれ、それは長い直線を描いた後、底で音を立てるイメージだ。
本物の硬貨ならば1Gを失うも同然だが、想像で1つ投げ落としたところで金を粗末にした事にはならない。藁にも縋る思いで、自作の感覚に五感を委ねようと決意した。
耳が記憶している硬貨の音を、頭の中で作り上げる。耳に心地よく心を高揚させる小さな金属音を、1つ。
クロウが両目を見開いた時、靴先が固い何かに
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