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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 12.
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念の入れようだ。
 今夜の月明かりは、弱々しい光ながらも妙に澄んでいる。しかし、たとえ月の青い光がクロウ達を照らそうとも、実際に影を描き出すのは屋外各所から人を見下ろす照明群だった。その為、1人の影が足下から放射状に長短合わせて6つも延びる。
 次第に小さくなる玉城達の確かな足取りも、濃淡の様々な6つの影を従えていた。
「皮肉なもんだな」
 声の主は、ロックオンだ。玉城達の背中を見送っていた彼が、黒の騎士団に対する複雑な心中を一言で表す。
 非常に要約した物言いだというのに、クロウだけでなくアスランや琉菜達までもが小さく頷いた。
「本当だね。大きな事件だけが、傷ついた黒の騎士団を生き返らせる事ができるなんて」
 敢えて言葉にするアレルヤに、「俺達だって同じだ」と刹那が呟く。「俺達も、カラミティ・バースで受けたあの痛みと闘っている。リモネシアの首都を砂地に変えた謎の力。そして、俺達の攻撃が全く通用しなかった銀色の大男と」
「ああ。だから俺達も、結果の積み重ねでインペリウムをひっくり返すしかないんだ」赤木がきっと顔を上げ、雲の少ない夜空を仰いだ。「俺達が辛いって事は、誰かが苦しんだって事だろ? 大きな事件が起きたら、もう誰にも辛い顔はさせないって思うのは有りじゃないか。元々俺達は、そういう資質をエルガン代表に買われた訳だし」
 気炎を吐く赤木だが、厳密に言うとその解釈は事実と異なる。しかし、『正義の味方』たろうとする者の思想として、赤木の主張は皆を納得させるだけのものを十分に含んでいた。
「だとしたら」前置きを用意して、琉菜が表情を曇らせる。「黒の騎士団のモチベーションは、上がるようにアイムがわざと誘導したのかしら。落とす事を前提に。…正直、あんまり考えたくはないんだけど」
「そいつが最悪のシナリオだな」
 背後でのやりとりに耳を傾けていたオズマは、琉菜の指摘を敢えて否定はしなかった。ひたすら一定のペースで歩き続け感情の揺らぎは身の内に秘めるオズマだが、アイムが企てているかもしれない最悪のシナリオに憤っているのは明らかだ。
 ずんずんと風を切って全員が屋内に入る。言葉少なに歩き続け、ふと立ち止まったかと思うと、目前には何台もの自販機が整然と並んでいる。
 1階の通路に用意された簡易休憩コーナーだ。プレートに印刷されている様々な飲み物の絵が、無駄に明るく通行人達の目を引きつける。
 食堂まで行くのではなかったのか。まるで、「これで済ませておけ」と言わんばかりの扱いに、まずクランが破顔する。
「了解したぞ! オズマ」
「いいんじゃないか」エイジも、遠目から飲み物を選びつつ賛同する。「俺達は24時間監視の任務がなくなって、丸々時間を持て余してる訳だし」
「ほんと、拍子抜けしたままじゃ終われないよ」
 シンがコーヒーを購入し、カフェ
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