第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十六話 凶夜の警鐘 参
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いるのだが、それ以上は流石に理解出来ていない。
「あの野郎、本当に何考えてやがんだか……あぁッ!腹が立つッ!」
王儀のそんな怒りを含んだ叫びが広間に木霊す中、
「…………百鬼丸は奥だよね」
萃香はそんな事を口にし、それに勇儀達が答えるよりも速く彼女は霧となってその場から消えていた。
萃香の“仲間を救いたい”という気持ちは実に正しい――――それを間違いだという者もいないだろう。
しかし彼女は一つだけ間違えた、それは――――――――責任を一人で背負い込んでしまった事だ。
その姿は凛々しくもあるが、この時の彼女はもっと手段を選ぶべきだったのだ。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
要塞の最奥に位置する広大な石の空間――――その中央にまるで王の座の様に据え置かれた椅子に足を組み、肘掛けに頬杖を突きながら百鬼丸は思案に耽ったいた。
自分以外の気配が無いその部屋に突如として霧が集まり一人の鬼の少女が現れると同時に、百鬼丸は思考を止め気だるげに声を掛ける。
「一体何の用だ萃香?俺は忙しいんだよ」
「…………大和と戦争するからか」
萃香の言葉に一瞬だけ百鬼丸に驚きの表情が起こる――――が、すぐに薄ら笑いを浮かべ、
「へぇ〜一体誰に聞いたんだ?――――まぁいい、分かってんなら準備しときなッ!派手な戦になるぜッ!」
遊びに燥ぐ子供の様に楽しそうに声を上げる百鬼丸とは対照的に、萃香の表情は冷め切っていた。
「…………今すぐ止めな百鬼丸」
「……ああぁ?」
萃香の言葉に百鬼丸は笑みを消し、射抜く様に鋭い眼光を彼女に向けるが――――萃香もまた向けられた眼差しを押し返すかのように睨み返した。
「大和と事を構えれば間違い無く仲間が死ぬ、今ならまだ間に合う――――馬鹿な考えを捨てな百鬼丸」
萃香の切実とも言える訴えに当の百鬼丸は実に詰まらない、と言った表情を作っていた――――例えるならば下らない喜劇を延々と見せられた後の様な顔だ。
「…………萃香よぉ――――お前は馬鹿か?弱ぇ奴は死ぬ、そんなもんは当たり前だろうが!それになこの組織の、お前等の頭領は誰だ?――――俺だろうがッ!長の命令に一々逆らってんじゃねぇよッ!」
「…………頭領なら仲間を第一に考えるもんじゃないのか?」
萃香は顔を伏せ表情を隠しながら尚も百鬼丸へと訴えるが、
「頭領が第一に考えるのは――――自分のやりたい事に決まってんだろうがッ!お前等は俺の命令に従ってりゃいいんだよッ!」
と、彼女の意見を無情に切り捨てる。
「…………そうか――――それなら」
顔を伏せたまま呟いた萃香
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