第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十六話 凶夜の警鐘 参
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―そこからしばらく東に進んだある場所。
其処には岸壁を利用して作った要塞、その前面に広がる広大な森、そしてその森の先は海岸線になっており海路の出入り口とも言うべき波止場まで整備されている。
これだけの施設がそこそこ離れているとはいえ伊勢の近くに在るというのに全く関知されていなかった。
それもその筈である――――恐らく結界などの術では当代最高である『博麗結界術』、その術者が造り上げた結界石――――一つだけでも七枷の郷位なら保護・隠蔽出来る代物を四つも使っているのだから幾ら神とはいえ見抜けないのは致し方なかった。
結界石の製作者である博麗 綺羅は『人々を脅威から救う』という理念を持つ“仁義”を体現したような人物であるが、娘を人質に捕られ致し方無かったとはいえ彼の力が巨悪の手助けをしてしまっているという事実は何と言う皮肉であろうか。
そう此処が、此処こそが虚空達が血眼になって探していた――――騒動の中心である百鬼丸の本拠地であった。
七枷の郷からほぼ一直線に此処に帰還した萃香が結界を超えた先に見たのは――――岸壁の要塞の前に広がる森の彼方此方に屯する異形の集団であった。
人型・獣型・不定形……様々な種族がおり、その総数は目測でも優に百は超えている――――その光景を目の当たりにした萃香の脳裏には虚空のあの台詞が蘇る。
『君の親分の百鬼丸は熊襲と組んで大和と戦争を始める気だよ、それはもうすぐにでも』
自身が想定していた最悪の状況だと思い至り萃香は苛立たしげに舌打ちをする。
もう憂慮は無い、そう覚悟した萃香は霧となって要塞の中へと進んで行く。
要塞の中も外と大差無い程に異形が溢れており、それを確認しながら萃香が辿り着いたのは自分の仲間達が集まる広間だった。
広間の片隅では何時もの様に巨石を持ち上げ屈伸運動をしている王儀が居り、その何時も通りの彼の後ろ姿が少しだけ萃香の荒波だっていた心に安らぎを与える。
「王儀、勇儀は何処だい?」
実体化すると同時に王儀の背に萃香は言葉をかけ、王儀は巨石を持ち上げた姿勢のまま振り返る。
「あ!萃香さん帰ったんすね!……ってその怪我どうしたんすかッ!」
「気にしなくていいよ……それで勇儀は?」
「…………あぁ帰ったのかい萃香、お帰り」
怪我の心配をしてくる王儀をいなしつつ萃香は勇儀へと歩みより、
「一体どんな状況なんだよ?」
と、短く問い質す。
流石付き合いが長い勇儀は萃香の質問の意図をすぐさま理解し、
「……意図は分からないんだが百鬼丸の奴が招集をかけたらしくてね、昨日今日でこの有様さ――――まるで戦争でも始まりそうな気配だよ」
勇儀は肩を竦めながらそう答える。彼女もキナ臭さを感じては
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