第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十六話 凶夜の警鐘 参
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は懸命に自分達に害意は無い事をつたえようと手振りも加えながら伝えてくる。
「嘘よッ!け、穢れは人を襲うものでしょうッ!」
「襲う者もいますけど僕達はそんな事はしません!僕達はお姉さんと一緒で捕まっているんです!」
「わたしと同じ?……どうして穢れが穢れを捕まえるよ!おかしいでしょッ!」
「え?でも人も人同士で争いますよね?妖怪も一緒ですよ?」
言い争っている内に逆に冷静さを取り戻した輝夜は何となく違和感を覚えた、もしかして考え方がズレているのは自分ではないのか?と。
事実彼女は箱入りであり世間、と言うよりは現在の地上に存在する者達の相互関係等を全く知らなかった。彼女の穢れ、妖怪に関する捉え方・考え方は自身がまだ地上に居た頃のままなのだ。
「…………とりあえず此処が何処なのか教えてもらえるかしら?」
困惑の表情を浮かべていた少年だが輝夜の言葉を聞くと何かを察したらしく自分が知る限りの現状の説明を始めた。
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少年――――名を九玲と言い、種族を烏天狗と名乗った。少年にしがみ付いている少女の名は笹螺、白狼天狗と言う種族らしい。
彼等が住んでいた集落が妖怪の集団に襲われ囚われの身になり、その襲撃の首謀者とも言うべき種族は鬼と呼ばれる者達で在った事。
当初は四十人以上捉えられていたそうだが少しずつ部屋から連れ出され帰ってきていないという。
正直此処が何処なのかは全く分からず、自分達がこの先どうなるかも分からず不安だという事。
「――――これが今僕に説明出来る全てです、すみませんあまりお役に立てなくて」
「……別にあんたが謝る事じゃないわよ……えっと……その…………説明してくれて……あ、ありがとう」
九玲に対し輝夜は不器用な謝意を示す、他者に対し感謝の言葉を口にするのは何時以来なのか輝夜自身も覚えていない。
そんな不器用な言葉にも彼は嫌な顔などせず朗らかな笑顔を浮かべていた、将来はきっと良き人格者になるだろうと輝夜は内心でそう思った。
暫しの沈黙が訪れた静寂な室内に突如奇怪な音が響き渡る。それは小さい音量であったが独特で例えるならば空っぽの袋を力任せに絞った時の様な音であった。
その音を世間ではこう呼んだ――――“腹の虫の声”と。
その音に九玲や笹螺を始めとした天狗の子供達は、今の音は一体誰のものなのか?と顔を見合わせている。そして唯一人誰とも目を合わせず膝を抱え顔を隠している人物が居た。
────輝夜である。
緊張の糸が緩んだ瞬間に鳴ってしまったのだ。決して自覚して鳴らせた訳でもなく、殆ど生理現象に近い事であるため彼女を責める事は出来はしない。
しかし場
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