第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十六話 凶夜の警鐘 参
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硬い……寝床のあまりの硬さに起床早々、気分は最悪と言ってもよく輝夜は苛立たしげに自分が今寝ていた場所を手で撫で確認してみる。
硬いはずである────そこは剥き出しの岩肌なのだから、その上で横になっているのだから寝心地が悪くて当たり前だ。
視線を動かし周囲を確認してみると、床だけではなく壁や天井全てが抜き出しの岩肌だった。
壁に等間隔で置かれている蝋燭の仄かな灯りが部屋全体をうっすらと照らし出しており、目算で二十畳程の広さであるのが分かる。
ぼんやりと部屋の観察をしていた輝夜の意識は、自分が置かれている状況の異常さを漸く認識し急激に覚醒した。
「…………っ!そうだ妹紅はッ!それにあ、あの穢れはッ!それで確か……虚空が…………それから……それから……」
棚に押し込んでいた物が一度に落ちてきたかの様に、輝夜の脳内では気を失うまでの出来事が無秩序に入り乱れた。
妹紅は無事なのか?あの後どうなったのか?あの穢れは?アイツが現れたのは現実だったのか幻だったのか?自分はどうしてこんな所に居るのか?そもそも此処は何処だ?
纏まらない思考に混乱し頭を抱えて座り込んだ輝夜の背に不意に何者かが声をかける。
「あの……大丈夫ですか?」
この空間には自分だけだと思い込んでいた輝夜は大きく肩を震わせ恐る恐る振り返った。
そこに居たのは少し癖っ毛のある黒い短髪を持つ十二・三歳程の少年。
そしてその少年の腰辺りには、少年が着ている解れが目立つ灰色の着物を掴むように抱きついている五・六歳位の少女が居た。
腰辺りまである栗色の髪をした少女は、髪色と同じ色彩を持つ瞳で輝夜の事を不安げに見つめていたが、少年の方は朗らかな笑顔を浮かべながら、
「えー、え〜と……大丈夫…ですか?」
輝夜の態度に若干の戸惑いを見せてはいるが再度気遣う様に声を掛けてくる。
輝夜は声の主の姿が少年であった事に安堵し漸く落ち着きを取り戻したが――――その少年の背後にあるモノを見てしまう。
黒い羽だ、鳥の様な羽が少年の背後に見える。それだけではなく、当初混乱していた時には気付けなかったが少女の頭部には獣の様な耳と腰辺りから同じく獣の様な尻尾が生え小さく左右に揺れていた。
それは人ならざる者の証でありそれが意味する事は、
「け、穢れッ!」
輝夜は彼等から距離を取るように座った状態のまま後退るが、直ぐに壁際到達しそれ以上下がれなかった。
そして漸く部屋の暗さに慣れた視界に映るのは少年達の後方に彼等と同じ年恰好の少年・少女達が二十人前後おり、輝夜に不安げな視線を向けていた。
「ま、待ってください!僕達は貴女に危害を加える気はありません!これっぽっちも無いです!」
輝夜の反応に驚いた少年
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