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雲は遠くて
94章 信也たち、<ゲスの極み乙女。>で盛り上がる
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うでもいいから、
みんなで、毎日を楽しく過ごして、平和な世界を(きず)いて行こうってことだと思うからね。
絵音(えのん)さん、確か、いまは26歳かな。おれより、1歳くらい年上なんだけど、
尊敬しちゃうし、共感しちゃいますよ。
大人(おとな)になるとかって、なんか、幻想のような気がしているんだ、
おれの場合、いつまでたっても、たぶん子どものままだろうから。あっはは」

 信也はそう言って、笑って、サッポロ黒ラベルのビールをうまそうに飲む。

 みんなも、明るい声を出して笑った。 

「ちょっと、みなさんに、質問があるんですけど。<ゲスの極み乙女。>のさあ、
『キラーボール』って、どういう意味なのかな?ミラーボールなら、
クラブとかの天井(てんじょう)で、(まわ)っている、ミラーボールのことだよね。
あっはは」

 竜太郎が、ビールを飲みながら、みんなを見ながら、上機嫌でそう言った。

「はい、竜さん。わたしにご説明させてください!」

 高校2年の木村結愛(ゆうあ)が、社会人のOLのようにそう言ったので、みんなは笑った。
1999年3月4日生まれ16歳の結愛は、1994年7月11日生まれ21歳の
水谷友巳と付き合っている。

「えーと、『キラーボール』は、ユーチューブで、
『ゲスの極み乙女。』がブレイクされるきっかけになった曲でした。
『キラーボール』というのは、絵音(えのん)さんが作った、
オリジナルな造語です。
この情報はネットで調べたことなんです。『西日本新聞』さんというところが、
絵音(えのん)さんと対談して、ご本人がそう語ったらしいんです。
絵音(えのん)さんは、<ゲスの極み乙女。>で、自分は何をすべきか!?って、
かなり考えていた時期があったそうです。
そんなときに、心の中に()まっていく、毒みたいなものを()き出そうとして、
書いた楽曲らしいんです。
『キラーボール』の歌詞には、それで、<踊らされる架空の毎日>とか、
<キラーボールと一緒に回るよ>とかの歌詞が出てくるんです。
でも、絵音(えのん)さんは、歌詞に、あまり、意味づけしたり、理屈っぽくすることが、
(きら)いだそうです。
『いろんな受け取り方があっていいと思う』とか
『歌詞って、一つの意味だと面白くない』とか、語っています。
わたしも、音楽の創造って、そんな感じの、みんなが、自分なりの想像力をふくらませて、
楽しむものだと思います!」

 結愛(ゆうあ)は、そう言い終ると、満足げに、みんなに微笑みながら、オレンジジュースを飲む。

「なるほど、そのとおりだよね。結愛(ゆうあ)ちゃんの考えかた、しっかりしているよ!
絵音(えのん)さんも、しっかりと、自分の考えを持っているんだよね。
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